食品企業各社が中期経営計画(中計)を軌道修正し、事業戦略も再構築する動きが活発だ。決算期や対象年度が異なるため、既に実施している企業もあるが、環境変化に対応して実施時期を早める動きも散見され、対応が急がれている。
食品各社の2022年度第2四半期決算の売上高は、新型コロナの規制解除や海外事業の伸長などにより多くの企業が増収を達成。二ケタ成長や過去最高売上を更新した企業もあった。しかし原材料や燃料コストの高騰が各社を直撃し、ロシアのウクライナ侵攻や円安、人手不足なども追い打ちをかけ多くの企業が収益で大打撃を受けた。
しかも、こうした現象が短期間に起こったことも大きかった。「一度に多くの困難が押し寄せ、これまでに作り上げてきたビジネス構造が大きなダメージを受けた」(髙宮満キユーピー社長)、「入社40年になるが、今までに経験したことのない激動の年だった。短期的に、これほど状況が変わることはなかった」(山口聡カゴメ社長)、「過去に経験したことがない過酷な競争環境に向かっている」(京谷裕三菱食品社長)、「事業環境はかつてないほどの影響を受けた」(畑佳秀日本ハム社長)、「コロナ禍による環境変化も多く、厳しい舵取りだった」(堀口英樹キリンビール社長)など各社のトップは激動の年を振り返っている。
そのため今年度の利益目標を下方修正する企業もあれば次期中計を再構築する動きも出ている。「3年ごとの中計をやめ中期ASV(味の素グループ・シェアード・バリュー)経営にシフトし、新たに30年までのロードマップを作る」と語る藤江太郎味の素社長。「中計は22~25年度が対象で当初から前半の2年間で計画を見直す方針だったが、見直しのタイミングを早める可能性がある」(山口カゴメ社長)、「事業環境の大きな変化を受け、第6期中計を昨年修正した。事業環境の大きな変化に耐えうる対応力の高い体制にすべく、事業基盤を強化し、定量目標の達成年度を2か年延長した(佐藤達也J―オイルミルズ社長)など対応はまちまち。
日清オイリオグループは「ビジョン2030は、当社グループの立ち返るべき指針として機能した一年だった」(久野貴久社長)とし、いち早い対応により成果を収めた企業もあった。また、流通でも「次期中計は定量を細分化し、KPI的な意味合いも含めたものにする」(服部哲也サミット社長)など見直し、ヤオコーの第10次中計(21~23年度)では「当初の想定していた環境と変わっているため進捗ははかり難いが、順調にきている」(川野澄人社長)と言う。
新たな中計では、多くの企業が海外強化を打ち出す一方で、サステナブル経営の取り組みや、DX、新規事業開拓、人財育成、EC強化、PBF(プラントベースフード)強化などに舵を切る企業もある。味の素は食品とアミノサイエンス融合による事業モデル変革を推進、キユーピーはコア事業を磨き、ニッスイは新規事業・事業境界領域の開拓を図る方針だ。