2023業界天気予報 「価値と価格」二兎を追え!知恵試される食品業界

やまぬコスト高騰の嵐 創意と工夫で突破を

第8波のさなかでも「ウィズコロナ」の日常が定着し、3年ぶりに行動制限のない年末年始に恵まれた日本列島。新年を故郷や旅先で迎えた読者も多いのではないか。なにかと世相をにぎわせるニュースが多かった昨年。食品業界はコスト高騰に苦しめられ、あらゆる商品で相次ぐ値上げに生活者の節約志向は一段と増した。とどまるところを知らないインフレの大波にさらされながら始まった2023年も、山あり谷あり波乱万丈の一年となりそうだ。本紙新年号吉例・元祖「業界天気予報」では、今年も担当記者の知見と独断で各カテゴリーの天気をずばり予想。業界の空模様をお伝えする。

「1、2割の原料高ならなんとかなっても、5割も上がるとさすがにどうしようもない。この先もまだ上がるようなら、3月ごろには強硬に再値上げするつもりだ。通らなければ『もういいです』と断ることも考えねばならないだろう。激動の一年になりそうだ」。ある中堅食品メーカーの社長は語る。同じ思いで新年を迎えた方たちも多いだろう。

久しぶりの晴れやかな気分と、不穏な雲行きが交錯するなかで突入した2023年。食品業界の空模様はどうだろうか。今回、本紙が「はれ」と予報した品目・業種は23。2年連続で減少し、全体の2割強にとどまった。

コロナ禍による特需の風も収まり、昨年から続く原料や資材、エネルギーコストの上昇も終わりがみえない。円安もひと頃より落ち着いたとはいえ、1年前に比べれば依然として大幅な安値水準にある。光熱費も高騰し生活への不安は増すばかりだが、一部品目ではすでに再値上げも始まっている。消費冷え込みへの懸念がふくらむのを背景に、好調だった業種の勢いにも陰りが出てきているようだ。

小売の動向をみると、コロナ下の巣ごもり需要が継続していた1年前に「はれのちくもり」と予報した量販は、今回「あめ」に転じた。特需の終焉とともにアフターコロナが視野に入るなか、食品の値上げラッシュと生活防衛意識の高まりから買上点数は減少傾向。業態を超えた競合も強まりつつある。

コンビニは昨年に引き続き「くもり」。コロナで落ち込んだ客足が徐々に戻り日販の回復が進む一方、エネルギーコストの上昇や食品値上げによる逆風も強まる。チェーン各社とも「生活応援」と「付加価値アップ」の両にらみで臨んでいる。

基礎原料系の品目では、厳しいコスト環境が続くなかでも業種ごとに事情はさまざま。家庭用塩・業務用塩はコスト高に値上げが追い付いておらず雨模様。適正利益の確保へ今年が正念場だ。すでに5回の値上げを実施した砂糖は「くもりときどきはれ」。インバウンド需要の復活に期待をかける。

やはり度重なる値上げが行われた業務用油・家庭用油は引き続き難しい環境が予想されるなかでも「くもりのちはれ」の予報。こめ油やオリーブオイル、アマニ油など付加価値化の推進とともに、生活者ニーズを捉えた価値提案も加速する。

一方、コロナで一時は落ち込んだ中食・惣菜は、再び10兆円市場を回復。レンジで温めるだけのパックごはんも、家庭でのストック需要が増えたことで単なる間に合わせ商材の地位を脱して主食に昇格。家庭でますます食卓に上る機会が増えるパスタやパスタソース、活発な新メニューの提案も奏功する鍋つゆ、出生数低下に反して市場は右肩上がりが続くベビーフードなど、環境変化の風をうまくつかんだ業種は好天に恵まれそうだ。

消費者の節約志向が強まる一方で、個人資産はむしろ積み上がっている。無駄な出費は抑えても、本当に欲しいものにはしっかりお金を使うのが今の消費スタイルだ。そんななかで、消費の二極化もより鮮明化した。

いかにして「価値と価格」の二兎を追うか――。業種・業態を超えた知恵比べが始まっている。

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