日本最大のコーヒー機器メーカー・富士珈機 需要急増で生産追いつかず

 日本最大のコーヒー機器メーカーの富士珈機がコーヒー焙煎ブームに沸きコーヒー機器の生産が追いつかない状況が続いている。

 コロナ禍の巣ごもり需要で自家焙煎需要が高まる中、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻で半導体をはじめとするコーヒー機器の部品の一部が調達困難になっていることが需給逼迫に追い討ちをかけている。

 12月8日取材に応じた杉井悠紀東京支店支店長は「個人で自家焙煎ビジネスを始めるのに適した生豆3~5g投入の小型焙煎機で半年強。大型機の全自動になると、電子機器が全て揃うのに最短でも半年、長くて1年かかる」と述べる。

 電気機器以外にも、ガスバルブやボタンスイッチなどの「意外なもの」も入手困難となっている。

 コーヒー焙煎機の高まる需要については、コロナ禍によって個人で運営する焙煎コーヒー屋は特需が発生したと指摘する。

取材に応じた富士珈機の杉井悠紀東京支店支店長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
取材に応じた富士珈機の杉井悠紀東京支店支店長
 「コロナ禍になった20年4~6月頃、大手焙煎業者は卸売り先の喫茶店やカフェが休業を強いられたことで厳しかったと思うが、私が知る限り多くの個人の焙煎コーヒー屋さんは外出制限の影響で“コーヒーが売れて、売れて”という状況となった」と語る。

 このときに富士珈機に注文が殺到するということはなかったが、その後、緊急事態宣言で休業やアルコールの提供禁止を余儀なくされた外食店からの引き合いが強まる。

 「コロナ禍で苦しまれたバーなどの外食店さまが補助金を利用するなどしてコーヒーの焙煎を選択する動きが出始め、そこから2年が焙煎機の需要が高まっていった」と振り返る。

 趣味が嵩じて焙煎を始める動きもみられるようになったという。

 「最近ではIT関連の仕事などで在宅をしている中で近所の焙煎屋さんでコーヒーに興味を持たれたという話を聞くことが増えた。副業で焙煎をしたいと考えられる方も結構いて、コーヒー業界外の方で今後開業をしたいと考えている方が多くいらっしゃいます」と語る。

 東京支店と本社(大阪市)では、再開した初心者向けなどのセミナーが盛況で予約が取りにくい状況になっている。「特に東京はお申込みが多く、予約開始すると数分後に埋まってしまう」という。

 コーヒーに活路を見出す外食店と開業を志す個人の双方向からコーヒー焙煎機の需要が高まる中、海外産が原材料高騰と円安で値上がりし、コロナ禍で生産を停止する動きもあり、富士珈機に需要が集中し前述のような大幅納期が続いている。

 このような需要の高まりは15年のブルーボトル上陸以来、あるいはそれを上回る勢いとみている。
「12年前に入社する以前から自家焙煎のトレンドがあり、今は感覚的に言うとブルーボトル上陸したときと同等くらい需要が高まっている」との見方を示す。

 富士珈機では初心者向けの小型焙煎機から500kg以上の生豆投入に対応した大型焙煎機まで多彩な種類を取り揃える。「全て人の手によって組み立てられるため、人数も限られているため、一所懸命やっているが生産能力を増やすことができない」という。

 初心者に推奨しているのが生豆250g投入の「COFFEE DISCOVERY(コーヒーディスカバリー)」。昨年9月に販売開始された電気ロースター「Cube e」は、ガスが使えない商業施設やアルバイトを擁するカフェチェーンに適している。