日本酒輸出レポート③ 吉乃川 カナダ発で世界各国へ

米国は専用商品展開

1548年創業と新潟県の酒蔵で最も長い歴史を持ち、醸造の盛んな長岡市摂田屋に拠点を構える。輸出は1993(平成5)年頃からカナダで本格的にスタート。当時は新潟地酒ブームの追い風もあったが、その中でも高品質な銘柄として評判を呼び、特にバンクーバーでシェアを高めたという。現在は北米(構成比約75%)を主力に、アジア・オセアニア(同20%)、欧州(同5%)と世界各国に展開する。

輸出は看板銘柄「吟醸 極上吉乃川720㎖」や定番のレギュラー酒「厳選辛口1.8L」のほか、アメリカでは現地仕様の商品もラインアップする。輸出専用の純米吟醸酒「Winter Warrior Junmai Ginjo」(720㎖・300㎖)は、多様な飲み手が満足感を得られる酒質にこだわった逸品。ネーミングは、雪深い新潟で清酒を醸す蔵人をイメージした。

また、「厳選辛口」は「Shogun’s Road」(720㎖)、「越後純米」は「Golden Horizon Junmai」(720㎖・300㎖)など現地の人が馴染みやすい英語名を採用。現地系スーパーでも広く販売されている。

なお、近年の輸出実績は2020年度(6月期)に大幅に落としたものの21年度には回復、22年度は過去最高の輸出額となった。

「新潟清酒の魅力PR」峰政社長

一方、同社の峰政祐己社長は昨年秋から新潟県酒造組合の海外戦略委員長を務める。現在は農林水産省が推進する「日本の農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)」の補助金事業として、新潟県産米で造られた新潟清酒の魅力を海外のバイヤーやレストラン関係者にどう伝えていくか施策を検討中。

峰政社長は「新潟の地酒はかつて『淡麗辛口』をキーワードに業界の一時代を築いたが、その後は環境の変化にあわせて各蔵が独自に進化を遂げてきた。そのストーリーを上手く伝えていきたい。食中酒としての強みを生かすべく、世界各国の料理にあわせたペアリング提案も重要」などと話す。