伊藤園、とろみ付き飲料に参入 平均寿命上昇による高齢化の進行を背景に「とろり緑茶」開発

 伊藤園は11月28日に「とろり緑茶」を新発売してとろみ付き飲料に参入する。

 同商品は“とろみ”のある緑茶飲料で、平均寿命上昇による高齢化の進行を背景に開発された。
同商品を皮切りに、様々なブランドやフレーバーでの展開を視野に入れ、とろみ付き飲料市場を開拓していく。

 高齢化の進行で浮上する問題の1つが、食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)。

 誤嚥は、加齢に伴う嚥下(えんげ)機能の低下で激しいむせ込みを引き起こし、誤嚥しそうになるのを検知して軽くむせ込む場合もある。

 声帯の上には、飲食したものが気管に入らないようにするための咽頭蓋(こうとうがい)と呼ばれるフタがあり、飲食の際、このフタの閉まるのが間に合わないと、気管から排出するためにむせ込みが生じる。

左から、安田哲也緑茶ブランドマネジャー、広域流通営業本部業務用営業推進部業務用営業推進四課の久保田敦之課長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から、安田哲也緑茶ブランドマネジャー、広域流通営業本部業務用営業推進部業務用営業推進四課の久保田敦之課長

 21日発表した広域流通営業本部業務用営業推進部業務用営業推進四課の久保田敦之課長は「要介護認定や高齢化に伴い、むせ込みも増加する」と指摘する。

 厚生労働省の「令和2年度 介護保険事業状況報告」によると、要介護認定数は75歳を境に増加。要介護認定数構成比は、65~74歳が11.3%であるのに対し、75歳以上は88.7%に上る。

 「厚労省の調べでは60歳以上で5人に1人、70歳台で4人に1人、80歳台で3人に1人が、程度の差こそあれ、むせ込みの自覚がある」と語る。

 とろみ付きの食品・飲料は、喉を流れるスピードを緩やかにすることで、フタが遅れることなく閉まり、むせ込みを防ぐ原理となっている。

 とろみを付ける際、とろみ剤を使用するのが一般的で、とろみ剤市場は約180億円と推定される。

屋根型キャップ付紙パックを採用した「とろり緑茶」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
屋根型キャップ付紙パックを採用した「とろり緑茶」

 伊藤園は、飲み物にとろみ剤を入れてとろみを付ける際に生じる“均質にならずダマになりやすい”“手間や時間がかかる”といった課題に着目して「とろり緑茶」を開発した。

 同商品の特徴について、安田哲也緑茶ブランドマネジャーは「とろみ付けが不要で、時間が経ってもダマにならない均質なとろみを維持。カフェイン少なめで、薄いとろみにも準拠して細いストローでも十分に吸えるのも特徴」と説明する。

 一般的にとろみを付けると香りが低減してしまうが、「とろり緑茶」では寒天などの原料の組み合わせと茶葉の選定によって「とろみに負けない緑茶本来の味と、時間が経っても変色しにくく、色鮮やかな緑色」を実現した。

 開けやすく注ぎやすい屋根型キャップ付紙パックも特徴。容量は自宅ほか病院や介護施設での注ぎ分けニーズを見込み1Lとし、税別希望小売価格400円で販売する。

 販売チャネルは、介護食品の品揃えが比較的充実しているECやドラッグストアを中心とする。
 「現在は、病院・介護施設さまに対して啓蒙・販促活動を行っており、今後は医師にも広く知っていただき、医師からの推奨を得られるように活動していきたい」(久保田課長)という。

 なお、開封後は要冷蔵となる。温めて飲むことも可能だが50℃を超えると粘度が下がるため、伊藤園では温め方として、電子レンジを使い500Wで10秒間温めることを数回繰り返し温度を確かめながら行うことを推奨している。

伊藤園は、産学連携講座として東京大学大学院医学研究科に社会連携講座「イートロス医学講座」を開設。「とろり緑茶」はこの同講座との共同開発商品となる。

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