富士特殊紙業 水性バイオマス印刷実用化へ 「TOKYO PACK」で第1号製品初公開 杉山真一郎社長に聞く

さまざまなモノの値段が上がる昨今、それは食品包装業界も例外ではない。昨秋、接着溶剤の酢酸エチルがショート寸前まで逼迫したことは、まだ記憶に新しい。こうした各種原材料の高騰や納期遅延は、近年の物流費の上昇や製造現場における人手不足などと相まって深刻度を増しているが、富士特殊紙業(=フジトク、愛知県瀬戸市)でも難しい舵取りが続く。

「原材料の供給に関しては総じてタイトだ。酢酸エチルは落ち着きを見せているものの、リスクは残っている。OPPフィルムについては同様に厳しい調達が続いていたが、今後は多少なりの回復が見込まれる。ただ、景気が後退し、需要減による需給安定となるのは悩ましいところ。何よりここにきて一番頭が痛いのがアルミ箔。自動車産業への優先度が高く、食品包装で必要とされる薄箔アルミの供給量が増えることはない。脱アルミは本当に喫緊の課題」(杉山真一郎社長、以下同)だという。

今9月期の業績に関しては、「売上は前期を上回る見込みだが、これは価格改定込みの話。注文自体は今でも昨対110~120%ペースでいただいているが、前述の理由から作り切れていない状況」とのこと。

そうした中、この10月12~14日に東京ビックサイトで開催される「TOKYO PACK(東京国際包装展)」に同社も出展する。

「最大の目玉は、軟包装向けでは世界初となる水性バイオマスグラビア印刷。その第1号製品を展示会で初公開する。当社が提案する水性グラビア印刷は、印刷工程における二酸化炭素(CO2)や揮発性有機化合物(VOC)の排出量削減において油性印刷を大きく上回るが、近年のバイオマス推進政策を背景にユーザーからの要望が高まっていた」ことから、東洋インキと共同開発に着手し、今回「黒色」の実用化にこぎ着けた。

第1号製品は、同じ中京の味噌メーカー・ナカモの人気商品「つけてみそ かけてみそ」の商品包装に採用された。店頭へのお目見えは年内を目標にしているという。

展示会ではその他、水性グラビア印刷、バイオマス、モノマテリアル、デジタル・グラビア印刷(FUJI・M・O)、スパウト付き容器などの製品や、SDGsへの取り組みなどを用意する。

「環境にやさしい新素材として、石灰石から作ったフィルム素材『LIMEX』もお披露目する。これは炭酸カルシウムを50%以上含む材質で、今後の普及が期待される」。同素材はニコニコのりの定番商品「焼きざみのり」に採用が決定。10月から順次店舗に並ぶ予定だ。

来期以降の事業展開に関しては、「やはり利益重視が大きなテーマとなる。今回の価格改定で原材料の上昇分ぐらいは賄えたかもしれないが、動力費や梱包代、運賃、人件費などまではカバーしきれていない。収益改善には、なお一段の値上げも必要になってくるのではないか」とする。

「コロナ禍のこの2年ほどで、協力工場とのネットワークも広がっている。コスト削減や環境対応なども含め、より厳しさを増す経営環境を乗り越えるためにも、一層の関係構築を進めていきたい」。