汗を流してこその体験価値

VRゴーグルを装着してメタバースの世界を体験した。訪れたのは外食の仮想店舗。両手にスティックを持ち座ったままスティックを操作することで店内や店外を行き来できる。左手で直進・後進、右手で左右の方向転換。そして首を動かすことで、空を見上げたり、うつむいたりといったことが可能となり、360度映像に包まれる。

▼会話もできる。店員から「ただいまお店が大変混みあっているので順番にお待ちください」と言われ、レジ前に移動すると客が列をなしていた。ここでは調理体験ができ、将来的にはメタバースで調理したものが実店舗で受け取れる構想もあるとか。

▼消費者とブランドの接点拡大策としてメタバースの活用は今後広がりそうだ。五感のうち視覚と聴覚のみを使い、また、歩くといった動きは不要なためリアル代替にはならないが、双方向のコミュニケーションや世界観を手軽に体験してもらうには好適なツールと言える。

▼しかし便利さとの裏返しで、そこで得られる質は限定的だ。一見非効率だが、苦労したり汗を流すことで輝きが増す体験価値がこの世にはたくさんある。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)