2021年度の家庭用チーズ市場は微減での着地となった。コロナ禍の内食志向、外食の代替ニーズを取り込み間口が拡大したナチュラルチーズ(以下、NC)は前年並みと健闘したことからプロセスチーズ(以下PC)を含め2019年度との比較では高止まり。コロナ禍で広がった間口、奥行は2021年度も一定程度維持された。
2021年(2021年1月~12月)の家計調査(総務省)では、購入頻度1.3%減、支出金額0.9%減、購入数量0.6%増、購入世帯数0.6%減だったが、2019年との比較では購入頻度7.8%増、支出金額11.3%増、購入数量14.8%増、購入世帯数2.2%増となっており、高止まりを裏付ける。
家庭用の種別では明暗が分かれた。コロナ禍での外出自粛、在宅時間の増加などによりケーキや菓子作りで使用機会が激増したクリームチーズは、2021年に反動減が予想されたが、「2019年度と比較すると約2割増。コロナ禍を機に使われた方が増え、そのままメニューとして使われている」「2021年度は1割程度減少したが、2019年度比では二ケタ増。間口は着実に増加している」(メーカー)など予想をいい意味で裏切った。
モッツァレラも「身近な料理への使用が増えるなどカプレーゼ以外の食べ方が浸透。露出増で間口も拡大」「まだまだパイは小さいが、平日のメニューに加えようという方が増えているような印象」(同)といったように認知度の上昇、食卓への登場機会拡大が続く。
NCについては、まだまだ間口が狭いことに加え、メーカー各社がそれぞれ強みを持つ商品を抱えているため、価値訴求によるブルーオーシャンという環境。もともと高単価商品が多いことから、PCと比べ価格に敏感なユーザーは少なく、コロナ禍による間口拡大効果もあり、今期も市場拡大の期待大。
一方、レッドオーシャンとなっているのがPCだ。スライス、6P、ベビーなど、大手中堅、PBの群雄割拠という状況。最大のボリュームを持つスライスは、4月の価格改定もありこれまで以上に価格コンシャス品に需要が流れている。
こうしたなか伸長しているのがデザート6P。デザート性を訴求した商品が多く、チーズ市場では珍しく改廃マーチャンダイジングにより消費を喚起している。「在宅勤務が定着するなかで、糖質の低い間食として間口が増加。お酒と一緒に食べられるなど、喫食用途も拡大している」(同)といった側面も支持拡大につながっているものとみられる。
2022年度の食品業界は、加工食品の相次ぐ値上げもあり内食志向が継続するとの見方がある。そうしたなか、家庭用チーズでは、いまだ喫食率や購入経験率が低いNC、特に国産原料を使用したNC強化が加速する見通しだ。