ファミリーマート目指すはコンビニでTV局並みの広告収入 好スタートを切った新メディア事業とは?

 昨年10月に開始したファミリーマートの新メディア事業が好スタートを切った。

 新メディア事業とは、ファミマ店舗内に大型デジタルサイネージを設置して来店客が楽しめるコンテンツ(番組)と効果測定が可視化できる広告サービスを提供するもので、既に2週間当たりのリーチユニークユーザー数は1000万人に上り、来店客・加盟店・広告出稿企業の三方から好評を博しているという。

 6月27日発表したファミリーマートの国立冬樹デジタル事業部長は「6月に3000店舗へのデジタルサイネージの設置が完了した。月間8200万人のお客様にアプローチでき、2週間でリーチユニークユーザーリーチはマスメディアの1つの指標である1000万人を到達した」と胸を張る。

人気コンテンツの1つ「わん にゃん お宅訪問」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
人気コンテンツの1つ「わん にゃん お宅訪問」

 デジタルサイネージは、42~65インチのスクリーンを3連結した異形ディスプレイで視認性の高いレジ裏やレジ上を中心に設置され、迫力の大画面に番組と広告が15秒間隔で音声を伴って映し出される。

 これを運営するのは、伊藤忠商事と昨年9月に設立した子会社のゲート・ワンで、小売業者間の購買データを活用したデジタル広告配信事業と広告代理店業を営む関連会社のデータ・ワンと連携して事業展開している。

 データ・ワンには広告IDベースで2000万人のリーチがある。

 これは、ファミリーマートの購買データを活用してデジタル広告を発信できる対象者が2000万人存在することを意味し、データ・ワンを組み合わせることで効果の高い広告サービスやソリューションを提供している。

店舗商品の売上増も見込める - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
店舗商品の売上増も見込める

 広告枠・番組枠はともに1枠15秒。10分で一巡するため1時間に同じ広告が6回配信される仕組みになっている。

 時間帯は、朝・昼・夜・深夜の4つを設け、広告主は朝に缶コーヒーの広告、夜にアルコールの広告といった具合に広告内容にあわせて選ぶことが可能。

 ゲート・ワンの速水大剛COOは「時間帯によって来店客層が変わるため、どの時間帯にどの層がどれくらいいるかのデータをしっかり確認してから広告が打てる」と説明する。

 加盟店には、広告収入が還元されるほか、広告対象の店舗商品の売上増が見込める。
実際に加盟店からは「広告した商品の売上アップに加えて、オリジナル番組が面白く売場が明るくなったなどご好評をいただいている」とゲート・ワンの島田奈奈取締役は述べる。

 番組は、ニュース・天気予報・クイズ・お笑いなど多岐にわたり、特に人気なのがインフルエンサーを起用したものや音楽、ペットの番組だという。

音楽コンテンツも人気 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
音楽コンテンツも人気

 今後は、デジタルサイネージの全店導入と個店ベースでの配信を目指していく。

 現在、関東・中部・関西・沖縄でエリア配信を実施。将来は、都道府県や市区町村単位での配信を経て個店ベースへと細分化していく。

 これによりターゲットをより絞り込んだ広告配信が可能になるとともに、まちの情報発信拠点として地域密着にも結びつく可能性がある。

 ファミリーマートの葦原勝デジタル・金融事業本部デジタル事業部広告事業グループマネジャーは「個店での配信が可能になると、本当の地域密着のドミナントになる。特殊詐欺防止の啓発といった全店で統一するものに加えて、花火大会の開催などまちの掲示板として活用していただくのも地域密着の1つの方向」との見方を示す。

 全店導入に向けては「3000店に設置してみて、設置可能な店舗とそうでない店舗が判明した。しかし、工法を見直せば設置できる段階に達しているため、3000店舗のノウハウを活かし工法を見直して全店につけていきたい」と意欲をのぞかせる。

 ファミリーマートの店舗数は現在約1万6600店舗。全店設置や個店ベースでの配信が実現すればTV・インターネットに並ぶ第3のメディアになりうる。

 「将来的には店舗をメディアにしていく。1日、1万6600店舗に1500万人が訪れる。これは1日のTV視聴者数とほぼ同じくらいの数。TV局は広告収入で事業を構築しており、同規模の接点数があれば同様の広告ビジネスが成り立つのではないかというのが我々の発想」との青写真を描く。

 ファミリーマートは、既存のコンビニビジネスに付加して広告メディア事業ほか金融事業とデジタルコマース事業に注力している。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)