日本ワインの新たな挑戦 「FROM FARM」始動 ものづくりで魅力発信 サントリーワイン

ワイナリー、品種、テロワール…さまざまな違いが生み出す個性を味わうことがワインの楽しみの一つ。サントリーワインインターナショナルでは、そんな魅力を最大限に引き出す日本ワインの新ブランド「SUNTORY FROM FARM(サントリーフロムファーム)」を始動。9月6日から19品を発売する。

「日本ワインの市場は右肩上がり。日本固有のぶどう品種や地産地消の安心感、和食に合うといった魅力が背景にある。一方で、市場全体で日本ワインはまだ5%未満。お客様との接点をまだ拡大・強化する余地がある。つくり手が日本の自然、風土と畑から向き合い、時間をかけて作り上げたワインを、その物語とともに提案していきたい」。8日の発表会で吉雄敬子社長は、新ブランドの狙いを語った。

ブランドは4シリーズで構成。サントリー登美の丘ワイナリー(山梨県)の「登美」、塩尻ワイナリー(長野県)の「岩垂原」からなる同社日本ワインの象徴「シンボルシリーズ」、登美の丘、塩尻のテロワールに加え、同社ワイナリーのものづくりへの思いを表現した「ワイナリーシリーズ」、青森・山形・長野のテロワールごとの個性を楽しむ「テロワールシリーズ」、日本固有のぶどう品種「甲州」「マスカット・ベーリーA」の食事に合う味わいを楽しめる「品種シリーズ」。

ものづくりの現場からの魅力発信も強化。5億円を投資して9月9日からリニューアルオープンする登美の丘ワイナリーでは、熟成を体感する「樽熟庫」や、富士山を望む大パノラマでワインを楽しめる「ワインテラス」など、体験を通してものづくりにかける技と愛情を伝え、日本ワインの本質的な価値をアピールする。ぶどう畑を起点に、サスティナビリティやものづくりを実感できる新ワイナリーツアーも計画する。

「(生産現場の)写真を見ていただくと皆さん驚かれる。工場で作っているんじゃないのかと。やはりワイナリーに来ていただくのが一番。工場で作っているのではないということ、どれだけ手をかけて素晴らしいものを作っているかを感じていただきたい」(吉雄社長)。

日本ワインを未来につなぐため、直面する課題にも対応を強める。温暖化や異常気象に対応し、ぶどうの成熟期をより冷涼な晩秋に移行させる新たな栽培技術に挑戦する。農家の高齢化・離農による農業人口減少や遊休農地増加に対しても、山梨県と連携を強化。圃場開発や「甲州」品種の収穫量拡大に取り組み、地域の農業復興支援に当たる。

同社の日本ワイン販売数量は、5月までの累計で前年同期比111%と市場を上回って推移している。通期で5.9万ケースの計画だ。新ブランドを起爆剤に、30年には20年比で約2倍となる10万ケースを目指す。

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