真犯人を見極めて

故・内田康夫氏が20年前に出した推理小説「鯨の哭く海」(祥伝社)をふと読み返した。ルポライター・浅見光彦が名探偵ぶりを発揮し、400年の捕鯨の歴史を持つ和歌山県太地町と海のない埼玉県秩父で連続して起きた殺人事件の真犯人を見破っていくストーリーだ。

▼作中では、クジラ肉を提供する飲食店が登場し、捕鯨やクジラ肉の提供に関して賛否両論が交わされる。しかし昨今の状況なら、お上による不当な締め付けの方がより深刻な問題だろう。

▼今回の緊急事態宣言では飲食店は時短・休業だけでなく、酒類の提供まで禁止された。テレビなどではルールを守らない人たちがしきりに登場するが、それはごく一部で、ほとんどの飲食店は要請に従っている。

▼宣言でダメージを受けるのは飲食店に加え、それを支える卸、物流、メーカー、生産者など多岐にわたる。酒を提供するからと一律に規制するのは、容疑者となった登場人物をすべて犯人と決めつける迷探偵の所業だ。この状況を名探偵のようにとはいかなくとも、真相を見極めて対応してもらいたい。