最後の授業

記者稼業も年月を重ねると、さまざまな出逢いと別れがある。そのカテゴリーに精通し、裏も表も知り尽くした業界人と運良く知り合い、徐々に関係が深まっていくのは記者業の醍醐味の一つ。記者にすれば“先生”と呼びたくなる存在だ。

▼“先生”の引退は残念であり寂しい。先日、取材中にある先生から今秋での引退を告げられた。半世紀近く最前線で戦ってきたのを知っているので「まだ早いです」とはとても言えず「お疲れさまでした」と言うのが精一杯だった。

▼これが最後の取材になると思いながら、記者の習性で根掘り葉掘り。「企業スケールは経営者の器の大きさに比例する。他者に任せられなければ企業は成長しない」「叩かなければ安心して渡れない石橋は最初から渡らない」などの話が印象的だった。

▼取材対応について「取材を受けたがらない企業もあるが、業界事情も含めて発信すべきだ。記事として書けないことも話さないと記者は全体像をつかめない。真実を理解してもらうために余計なことも話してきた」。“最後の授業”も多くの名文句があった。