検証・製糖業界統合(後編) 日甜参加で枠組み拡大 糖調法の破綻も視野に

大日本明治製糖(以下、DM)は業界2位グループの一角を占める企業として、代理店制度やリベート制度の改廃や工場共同化による生産効率の向上など筋肉質の効率経営を進めてきた。同社も今回の統合で同様にスケールメリットを共有できるし、三菱系(親会社・三菱商事)の製糖企業だからといって、三井系との系列違いを障害に感じている様子も見受けられない。それよりも両系列の強みを生かした相乗効果の方が大きそうだ。特に海外進出では三井製糖が群を抜いて拡大しているが、DMも一昨年の10月に海外事業推進室を立ち上げて攻めの体制を整えており、このあたりでも協力関係が強化されそうな感じもある。

さて、同統合・提携の意外性は、ここに日甜が加わることだ。

日甜は三井製糖とDMの持ち株会社と資本業務提携を結ぶ。北海道の製糖工場は、いわゆるビート(てん菜)を農家に栽培してもらい、収穫したビート原料を製糖する役目を担っている。つまり国産糖を作っている会社だ。現在は北海道に3社。日本甜菜製糖、北海道糖業(三井製糖子会社)、ホクレンとなっているが、提携後は日甜と北海道糖業は親戚関係になる。どういった親戚付き合いになるかは不明だが、今回の製糖統合の規模感や枠組みを日甜の加入が一層大きく見せている。

日甜の場合は、九州地区にてDMとともに製糖工場を共同運営しているものの、主業は三井製糖やDMが行っている輸入糖の精製ではなく、国内原料の製糖なので白糖工場のような稼働率低下の悩みはない。毎年の原料の出来(糖度が高いか低いか)にも左右され、むしろ人手不足の方が問題は大きいと思われる。

いずれにせよ日甜は国内随一の製糖グループに参画する予定であり、経営基盤の安定化やそこから生まれる営農支援、非砂糖事業の拡大、技術共有、海外展開など活性化の方策が拡大することは間違いない。引いては北海道農業の安定にもつながっていく。

また、北海道のビート工場も再編の噂が出たり引っ込んだりしている。慢性的な人手不足やトラック不足、人口の札幌集中など日本の食料基地として課題は少なくない。ビート栽培や製糖面でもより効率化が求められる場面も予想され、その時に今回の提携がどう作用するか注目される。

中長期的な視点で製糖業界を見た場合、こうした規模拡大でさまざまな問題を解決していくのが上策だろう。相互の技術交流や製糖技術の継承、非砂糖部門におけるR&Dの共同展開、さらに各事業の横断的な融合や発展もあるだろうし、海外市場の開拓加速にも役立つかもしれない。それと最近よく聞こえてくるのが「糖調法の破綻もある」という声。もしくは「いつまで糖調法がもつのか」など。単なる砂糖業界の不満が制度不安を煽っているのではなく、国産糖の保護政策である糖価調整制度の「無理」(砂糖消費減が要因)が拡大していることで破綻を心配している。

平成時代の製糖再編は消費減に対する対症療法的だったが、令和以降は経営の発展性や砂糖制度の継続性も考慮した“最善策”を目指すところまでステージが進んでいるのかもしれない。

砂糖は広く食品製造から日々の献立まで利用される必須食材であるが、一方で“悪者論”などバッシングも受けてきた。代替甘味料の台頭などもあり、ついには再編を繰り返すに至っている。砂糖業界は国産糖の保護財源の大部分を背負っての製糖経営に不満が絶えず、甘味原料すべてで平等に負担することや国庫負担の拡大を希望している。特に現在はコロナ禍の真っただ中であり、世界的な最悪ケースを考えると食糧危機にまで及ぶ。国産作物の意義や役割を考える時期とも奇しくも重なった。今後は同3社の先手を受けた他社の動きからも目が離せなくなった。