アーモンドミルク市場が健康志向の高まりを背景に右肩上がりになっている。
アーモンドミルクは、アーモンドと水からなる植物性飲料で、アーモンドを挽いてペースト状にした商品やすり潰したアーモンドに水を加えて濾過せずにつくられた商品などがある。
アーモンドにはビタミンE、オレイン酸、食物繊維、ミネラルなどの栄養成分が豊富に含まれ、中でもビタミンEの含有量は全食品の中でもトップクラスとなっている。
ビタミンEは強力な抗酸化作用をもち、血行促進作用や老化の原因とされる糖化を防ぐ抗糖化作用が注目されている。
美容や健康に関心の高い女性に浸透している一方、“ミルク”のカテゴリー名から“牛乳を使用した飲料”“甘そう”といった誤った認識を持たれやすく、カテゴリーの認知拡大がさらなる市場成長の課題となる。
日本テトラパックの調べによると、アーモンドミルク市場は19年、販売量が前年比30%増の1万3000kl、販売金額が24%増の60億円となった。
この中で、同市場の9割強のシェアを握る江崎グリコの「アーモンド効果」はブランド計で19%増となった。
牽引アイテムは「オリジナル」と「砂糖不使用」の1000mlサイズで2品計では40%強伸長。200mlサイズでは「砂糖不使用」と「3種のナッツ」が好調となった。
1000mlサイズの好調要因については「配偶者、パートナー、子供など家族の飲みものとして飲用量が増えている」(江崎グリコ)とみており、飲用層としては男性の伸びが顕著になった。13年の発売当初2割の性別購入率だったのが4割弱まで拡大した上に、1人当たりの購入金額も男性のほうが高くなっているという。
今年も出足好調で、1-3月ではブランド計で20%程度伸長し、新商品とリニューアル品を発売した3月2日以降は約40%増と勢いを加速させている。
家庭内外の飲用シーンや“飲用理由No.1はおいしさ”を謳った新TVCMやBEAMSDESIGN監修の必ずもらえるトートバックのキャンペーンも好評だという。
高付加価値ラインであるチルドカップの「アーモンド効果 TASTY」2品(220ml)は、一部使用していた凍結粉砕アーモンドをアーモンド中100%使用に刷新して、アーモンドの香ばしさと飲みやすさを両立させたところ「働く女性のオンタイムのほっと一息にぴったりと好評で3月は目標比150%増の着地見込み」となる。
ブランド全体ではこれから夏場に向けて「“おいしいアーモンドの嬉しい効果”に一貫したコミュニケーションを実施するため、そのまま飲用での美味しさに追加してコーヒーに入れて飲むことを打ち出していく」。
ポッカサッポロフード&ビバレッジの「アーモンド・ブリーズ」も19年は市場と同様に20%強伸長。これを受け同社は、大豆・チルド事業の第3の柱として「アーモンド・ブリーズ」に注力していく。
アーモンド・ミルクカテゴリーを担当する加藤貴義係長は、「アーモンドミルク市場は急成長を続けるも、まだ豆乳の10分の1、牛乳の100分の1程度の規模でミルクという視点では大きな伸びしろが残されている」と意欲をのぞかせる。
牛乳・豆乳に続く新たな選択肢として毎日の生活に取り入れてもらうには(1)牛乳や豆乳に比べて価格差がある(2)使われ方が限定的(3)商品の理解不足――の3つの課題があるとし、この課題解決に向けて今回リニューアルに踏み切り3月30日から発売している。
具体的には「アーモンド・ブリーズ砂糖不使用」と「同オリジナル」のカルシウム量を強化し、一般的な牛乳と同程度のカルシウムが摂取でき、牛乳と同じような用途で楽しめるように改良した。
カルシウム量は200mlサイズで137mgだったのを239mgに増やし、「砂糖不使用」に限りクリーミーさを強化してより飲みやすくした。
パッケージもブランド全体でカテゴリー名を大きくあしらうなどして磨きをかけた。
1000mlサイズでは、使われ方を広げて使用頻度を向上させるべく季節に応じたレシピの提案を予定。1000mlサイズの価格も従来品に比べ48円値下げし希望小売価格を税抜き350円にして購買を促進していく。
同社は昨年、業界初の缶容器となる「アーモンド・ブリーズ やさしい甘さのアーモンドミルク185g缶」を新発売し常温売場やインドア自販機など新たな販路開拓にも挑んでいる。同ブランドにとって、ホット&コールドの展開も初の試みとなった。
この手応えについて「自販機を中心に販売していることもあり、今までアーモンドミルクを手に取ったことがない人がトライアルしていると考えている。冬季は自販機ならではの特徴を活かしてホット販売を中心に展開し、“アーモンドの香ばしい香りとやさしい甘さを楽しみながら、ヘルシーかつ手軽に暖まることができる”という新しい価値をお客様に提供できたと考えている」と説明する。