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流通・飲食國分勘兵衛 平成を語る〈7〉
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國分勘兵衛 平成を語る〈7〉

問われる職業倫理 規制に頼らず信頼醸成を

雪印グループを解体に追い込んだ2度の雪印事件(平成12年〈2000〉雪印乳業集団食中毒事件、平成14年〈2002〉雪印食品牛肉偽装事件)を皮切りに、平成中期には食品事故、表示・品質偽装、食品テロが多発した。そこに業界の慢心があったのは確かだが、コストの正常な転嫁を阻む価格競争が事故や偽装の温床となっていたことも否定できない。

――平成10年代には食品関連の事件・事故が相次ぎ、消費者の食の安全・安心に対する関心が高まりました。

「偽装表示のような職業倫理に反する事件が起きてしまったのは残念なことです。平成期の反省点として記憶すべきでしょう。しばしばマスコミに取り上げられた異物混入なども、本来あってはならないことです。100%防ぐのは難しいという声もありますが…」

――事故や偽装が次々に発覚した平成19年〈2007〉前後は、いわゆる「川上インフレ・川下デフレ」の時期に当たります。コストの正常な転嫁を許さない競争環境にも問題があったのでは。

「その因果関係は分かりません。ただ、当時は穀物を中心に輸入原料が急激に上がっていましたから、サプライチェーンに歪みが生じないよう、安売り以外の販売促進のあり方などについてもう少し知恵を絞るべきだったんでしょうね」

――平成20年〈2008〉、日本向け冷凍食品の受託製造を専門に手がけていた中国天洋食品で殺虫剤混入事件が発生しました。後の捜査で待遇に不満を持つ工員による報復行為だったことが判明しました。

「日本も缶詰輸出で外貨を稼いでいた頃には、諸外国に買い叩かれた腹いせに、石などを詰めて送るケースがあったと聞いたことがあります。万全な品質保証体制を築き上げるには、取引先の労働環境にも配慮し、信頼関係を醸成していくより他にないということでしょう。根本的には職業倫理の問題です」

――安全・安心意識の高まりを背景に、メーカーは異物混入対策などに多額の設備投資を行い、卸も品質管理の強化やフードディフェンスへの投資に力を入れるようになりました。来年はHACCPの義務化も控えており、食品製配販の品質管理コストはますます高まる方向です。この問題をどうお考えですか。

「難題ですね。消費者の要求レベルが上がり、それに応える法律が整備されれば、業界はコストをかけて対応していかなければならない。平成期にも同様のケースが多数ありましたよね」

――ええ。平成19年〈2007〉のミートホープ牛ミンチ偽装事件の後には、業務用商品への原材料表示が義務づけられました。平成20年〈2008〉に発生した三笠フーズによる事故米不正転売事件の後には、米の取引管理記録を義務づける米トレーサビリティ法が施行されました。

「そうした政府の管理体制が強まるほど、製造・流通コストが上がり、最終的には価格への転嫁という話になってしまいます。そんな事態を回避するためにも、私たち食品事業者は職業倫理に徹していく必要があるし、消費者の方々にも要求と買いやすい価格のバランスというものに目を向けていただきたいと思うのです」

――制度に頼ることなく、自由で健全な事業環境と購買環境を維持できる国であり続けたいですね。

「ええ。法規制に頼りすぎるのは必ずしも良いこととは思えません」

(次号に続く)

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