外食店などにコーヒーや紅茶を販売する業務用嗜好品市場では、オペレーションの簡素化に対応した提案が強まりつつある。カウンターコーヒーは、レジで会計して紙カップを受け取るのが一般的だが、今後は人手不足を背景にレジを通さずにマシンから直接購入するスタイルが広まりそうだ。セルフレジが広まりつつある中で、コインメックや電子マネー決済機能を搭載したマシンの提案が多く見られるようになった。
三井倉庫ロジスティクスは現在、FRANKEマシンでクレジットカードや交通電子マネーで支払いできるように準備を進めている。同社の杉浦宜修取締役執行役員SCM事業本部長は「働き方改革の一つとしてオフィスに本格コーヒー導入を検討される企業さまが増えているが、料金回収が導入障壁の一つとなっており、その障壁を省くものとして提案していく」と語る。
同社では、コンビニや外食チェーンの新店開業時に、多くの業者との工事内容やスケジュール調整など手間と時間がかかっている課題にも対応。コーヒーマシンだけでなく、エアコン、冷蔵庫などの搬入・設置、電気工事などを一括して行うサプライチェーンソリューションを提案している。
UCCグループでコーヒーマシン事業を展開するラッキーコーヒーマシンは、IoT対応全自動ドリップ式コーヒーマシン「BM―LCD1」の追加オプションとして電子マネーリーダーと生乳ユニットの販売を開始。
IoTは、複数台導入するチェーン店に有効で、本部が店舗ごとの販売データを管理しマーケティングに活用できるほか、メニューレシピの一斉設定、清掃実施状況のモニタリングが可能となる。前出のFRANKEマシンでも導入予定となっている。
多くのコーヒーマシンブランドを輸入販売するブルーマチックジャパンもIoTや電子マネーへの対応を進めている。日々の手入れの簡素化にも着目し、「カリマリ」ブランドの新製品「HARMONY ULTRA」のミルク抽出部分には「CARImilk(カリミルク)システム」を導入。通常、ミルクの抽出部分は乳脂肪分が付着するため分解洗浄しなければならないが、同システムではミルクの抽出部分の分解洗浄を不要にした。
キーコーヒーは、コインメックの金銭処理ユニットを導入すると本格的なコーヒーが無人販売できるテイクアウトコーヒーシステム「KEY‘s CAFÉ EX」を昨年から展開している。給排水と電気設備があれば、狭小の遊休スペースでも出店でき、これまでにアパレル、市役所、ベーカリー、高速パーキングエリア、商業施設など8か所に導入されている。
4月から家庭用と業務用でスターバックス製品の扱いを開始したネスレ日本は「カフェ・イン・ショップ」や「ネスカフェサテライト」などの「ネスカフェ」のシステムで人手不足などに対応している。
オペレーションの簡素化ニーズに対して、パウダー技術で威力を発揮しているのは味の素AGF社が家庭外で展開する「AGFプロフェッショナル」ブランド。水でも溶けやすいアグロマート製法と新鮮な果汁感などを高める成分をカプセル化するフレッシュフルーツエンハンサーの技術を強みに、居酒屋・ホテル・レストランへの導入を進め、同ブランドの前期(3月期)売上高は前年比36%増となった。
AGFの中澤正規外食・オフィス部長は「パウダー入りのスティック1本をさっと水に溶かせば、2ℓあるいは1ℓのおいしいドリンクが簡単にできる。このことが外食店さまなどにとって、オペレーションの改善、省スペース、省ゴミ、ロス削減、メニュー数の拡大につながるということが徐々に理解されてきている」と手応えを語る。
同様のメリットに対し、三井農林は業務用ブランド「ホワイトノーブル」の濃縮液(コンク)で提案。同社は茶葉原料と製造ラインを持ち、約30年にわたり濃縮液のノウハウを積み上げている。