昨年のサッポロビールは髙島英也社長が「大変厳しい年だった」と語るようにビール類販売実績は前年比8.1%減となった。一方でノンアルビールは約3割増、RTDは8割弱増と大幅に伸長するなどし、また狭義のビールは市場を上回った。「意図して取り組んだものはより強くできた。将来への布石となる新しい資産が築けたと思う」(髙島社長)と話す。
ビール類減少の要因として髙島社長は、昨年1月に刷新した新ジャンル「麦とホップ」が振るわなかったこと、前年投入の「ヱビス華みやび」の反動減、業務用回収容器の値上げ、災害などによる消費の冷え込みを挙げる。
今年のビール類では「ビール再強化宣言」を掲げブランドの強化を図り
①ビール強化のさらなる推進
②新しいビールの楽しさを提案
③節約志向への対応
――を取り組み方針に据える。
「黒ラベル」はブランド計では微減だが、単体では4年連続で前年超え。特に缶は8.1%増と好調に推移した。今年も引き続き「完璧な生ビールを。実感・体験」をテーマに掲げてコミュニケーションなどを展開。20~30代を戦略ターゲットとして情緒価値の増幅を図り各接点でプロモーションを展開、リアル体験イベントや業務用でパーフェクト黒ラベル店の拡大を目指す。
4月1日「黒ラベルの日」に向けて、泡をより白くするといった刷新を行い、体験イベントや消費者キャンペーンも予定している。
7年連続で伸長している「サッポロラガービール」(通称:赤星)、18年連続で売上げアップの「サッポロクラシック」でも発信を強化する考えだ。
「ヱビス」はブランド計では厳しいが、低調なプレミアムビール市場では健闘。130周年を迎える20年に向けてスケールアップを図る。CMには中村勘九郎さんを起用してコミュニケーションを強化。また、コクを最も愉しめる形状を追求したという新ジョッキ・タンブラーも導入、樽生提供品質の啓発にも努める。
2月26日には通常の1.5倍の時間をかけて熟成した「ヱビス プレミアムエール」を発売。ひとりの時間をゆったりと過ごすニーズに向けた“何もかも忘れて贅沢な味わいの余韻に浸る”ビールだという。青いグラデーションの缶体や、上面発酵による濃密な香りなどが特徴だ。
イノベーティブブルワーは今年から同社が販売。4月には独自のストーリーを持つ「That’s HOP!」の缶製品を発売する予定。
CtoCコミュニティ「HOPPIN’GARAGE」を活用した価値創造にも取り組み、19年は1人のユーザーのアイデアを元に毎月1回ビールをつくり、評判のよいものについては実際に商品化して販売するなどの取り組みを行う。既に3企画のビールがつくられ、お披露目イベントも行われている。
注目が集まる新ジャンル市場では辛口ニーズが高いとみて、高発酵・高炭酸の「本格辛口」を4月2日に投入。消費増税などで節約意識も高まり、本格感のある新ジャンルが主戦場になる可能性もあるとみて商戦を展開する。