日清食品の深井雅裕常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長は「サプライチェーンの最適化で重要なのは安く製造する、安く運ぶといったことだけではなく、新しい価値づくりだと考えている」と話す。今後は欧州のように環境や健康への配慮を重視する価値観が日本でも浸透していくと予測。「資材調達から製品物流まで持続可能性を追求していることや、当社の最適化栄養食『完全メシ』ブランドなどが新たな価値になっていく」と展望する。
欧州で起きている変化の一例にオランダのチョコレート菓子「Tony’s Chocolonely(トニーズ・チョコロンリー)」を挙げる。そのおいしさだけでなく、徹底的にサステナブルで環境に優しい商品コンセプトも支持され、価格が割高でも現地でシェアを高めているという。
また欧州ではパッケージ表面に栄養プロファイリングの記載が義務化されていると紹介。消費者がより健康的な食品を選択しやすくなっている。
深井常務は「これらの取り組みは日本でもいずれ重要性が増してくる。当社製品はおいしさや簡便性はもちろんのこと、栄養や環境保全などの価値も提供できるようにしていきたい。『完全メシ』は日本人の食事摂取基準で設定された33種類の栄養素とおいしさの完全なバランスを追求したブランド。サプライチェーンの川上から川下まで新たな価値を創っていく」との考えを示した。
物流改革は可視化から
一方、サプライチェーンを改革するにはまず可視化が重要であると強調。
足元の課題として国内の物流でみられる商慣行を挙げ、「加工食品業界ではメーカー、卸店さま、小売店さまの間で荷卸しや仕分けなどの付帯作業をどこが負担するかよく問題になる。その中身は非常に不明瞭と言わざるを得ない。なぜそうなるかというと、当事者間で一連の業務プロセスを把握できていないからだ。すべての作業コストを負担するのは製品を購入していただくお客様」と指摘する。
その上で「付帯作業をどの段階で行えば最も持続性を担保できるか、効率性を高めてコストを下げられるか、そしてお客様に還元できるかという視点が重要。まずは製配販がパートナーになって現状の作業負担やコストを見ていくことが大切で、取引先さまにも広く呼びかけている」と述べた。


