味の素AGF ブラックコーヒーに挑む
残業時間の削減や業務効率化の推進といったオフィス環境の変化を受け、来客時に紙コップに入った飲料ではなく300㎖前後の超小型PETボトルの飲料を提供する接客スタイルが今後強まりそうだ。
アスクルが展開するオフィス向け(BtoB)「ASKUL」では、水と緑茶が牽引し900㎖未満の小容量カテゴリーは近年、金額・数量とも前年比10%強の幅で拡大。「小容量の中でも320㎖や280㎖のようなさらに小さい容量が大きく伸長し、その要因としては会議用、来客用のニーズが多くなっているためと考えている」(アスクル)。
同社は以前から、会議用・来客用の小型PETニーズに着目し「キリンのやわらか天然水」(キリンビバレッジ・310㎖)と「香り豊かなお茶 緑茶」(伊藤園・320㎖)を企画・販売し、容器は2品ともオフィスでの備蓄を想定し丸型ではなく冷蔵庫内に積みやすい角型となっている。
今回、このオフィス接客時の飲用機会にコーヒーで攻め入ろうとするのは味の素AGF社。同社はオフィス向け(BtoB)EC専用商品として280㎖小型PETの「〈ブレンディ〉ボトルコーヒー ザ・コーヒー」を開発し、8月22日からアスクルで先行発売する。想定売価は税込み89円。同商品はアラビカ豆を100%使用したブラックコーヒー。味の素AGF出荷実績などによると、オフィスで飲まれるボトルコーヒーの約9割がブラックだという。
ECと未開拓領域を担当する新領域開発部の山本倫子商品開発グループ長は「商談時などに極力飲み切れるサイズにした。味わいも飲みやすさを考えて濃厚ではなくスッキリとした味わいでゴクゴク飲めるように仕立てた」と説明する。
パッケージは情報を削ぎ落としたデザインを採用。「飲用者に選ばれて買われるのではなく、総務担当者など特定の人に買われてから飲用者である訪問客に提供されるため、まずブラックコーヒーであることを理解してもらうことが重要。次に安全・安心の担保として『ブレンディ』ブランドを伝えていく」。
この考えの下、パッケージにはコーヒーの文字を大きくあしらい、ブランドロゴは目立たせずブランドカラーである深緑を配色した。
紙コップをパッケージ化(RTD化)することで業務の効率化と飲用時品質の安定化が見込めるほか、嗜好飲料のため導入企業の工夫次第ではコミュニケーションの活性化につながっていく可能性もある。
「働く環境が大きく変わり、そこで求められるニーズも大きく変わってくる。効率重視でコミュニケーションの希薄化が起きている企業もあり、コーヒーがコミュニケーションのツールになり得る」と期待を寄せる。(写真下記事続く→)
既存品では、「キリンのやわらか天然水」がアスクルの先行発売を皮切りに他のECでも展開し、今年6月に過去最高の出荷を記録した。継続的なコミュニケーションが奏功し、アマゾンでは1~6月受注額が約3倍規模に拡大し定期登録数も増加しているという。
飲用実態については「IT企業などで来客時によく出されている模様。パッケージにKIRINの企業名が大きく出ていないので誰にでも出しやすいのかもしれない」(キリンビバレッジ)とみている。
同商品は隣席の人と間違えにくい6種類のデザイン柄も特徴で、SNSなどで好評を博しているという。