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飲料嗜好飲料沖縄コーヒーをハワイコナコーヒーのようなお土産にする 「20年、30年と続けることが我々の責務」ネスレ日本の深谷社長が決意
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沖縄コーヒーをハワイコナコーヒーのようなお土産にする 「20年、30年と続けることが我々の責務」ネスレ日本の深谷社長が決意

 ネスレ日本はサッカークラブの沖縄SV(エス・ファウ)とともに「ネスカフェ 沖縄コーヒープロジェクト」を展開し、沖縄県産コーヒーの振興に取り組んでいる。

 ネスレがグローバルで取り組む、コーヒーのサプライチェーン改善プログラム「ネスカフェ プラン」の一環。名護市・うるま市といった行政や、琉球大学・沖縄県立北部農林高等学校などとも協力し、産官学の連携でプロジェクトを推進している。

 2019年4月のプロジェクト開始から、台風の被害などの苦難を乗り越え約6年半が経過し、現在は同プロジェクトを通して沖縄県内20か所の農場でコーヒー栽培が行われている。

 9月25日、メディア発表会に登壇したネスレ日本の深谷龍彦社長兼CEOは「ゼロから手探りの状態で始め、約6年半が経過したことが感慨深い。これからも多くの人を巻き込んで、しっかり時間をかけて沖縄にコーヒーを根付かせたい」と熱意をのぞかせる。

「ネスカフェ原宿」で生産地の写真などを展示
「ネスカフェ原宿」で生産地の写真などを展示

 プロジェクトは、地球温暖化の影響により減少傾向にあるコーヒーの生産地の増加を模索するとともに、沖縄県内の農業振興を目的とする。

 沖縄県では、後継者不足などの影響で耕作放棄地が増加。加えて、沖縄県の農作物は本州に運ぶための輸送費が高く、結果として競争力が下がってしまうという課題がある。

 コーヒーは、沖縄県特産のゴーヤやマンゴーと比べてニーズの裾野が広いことから農業振興の高いポテンシャルが見込まれる。

 プロジェクトは長期的な計画であり、「20年、30年と続けることが我々の責務」と決意を固める。

 目標は段階的に設定。
 現在は沖縄県の土壌や気候に適した苗木の選定。3年から5年後に、観光農園での収穫体験などを拡大。10年から15年後に、ハワイコナコーヒーのように沖縄コーヒーのお土産化を目指す。

 2か所の直営管理農場でコーヒー栽培に従事する沖縄SVの髙原直泰CEOは、サッカーを中心としたスポーツクラブの設立に伴い、沖縄の一次産業の課題解決や地域貢献を志しプロジェクトを発案した。

 今後について、高原CEOは「沖縄という場所柄、観光と絡めて、自分達が管理している農園で収穫体験ができればより沖縄コーヒーを盛り上げられる」と語る。

 直近の課題に、沖縄県特有の気候に適した品種の選定を挙げる。

 沖縄県は標高が低く、南北で気候や土壌が異なる。さらに、沿岸部からの塩を含んだ降雨や収穫期の多雨などにより、適正品種の選定が難しいという。土壌に合う品種の研究や、品種改良に継続して取り組んでいる。

 沖縄に常駐し農業サポートやネスレグローバルとの橋渡し役を担うネスレ日本生産本部製造サービス部の一色康平氏は「コーヒーは種をまいてから収穫できるまでに3年から5年かかり、適正品種の選定にはまだ時間がかかる」と訴える。

 沖縄コーヒーの発展には、収益性も立ちはだかる。

 現在、プロジェクトに参加している生産者の多くは兼業農家で、農業以外の本業の傍ら、または多品目栽培の一種としてコーヒー栽培を行っているという。

 協力農家の一人、合同会社宮平農園の総務・栽培管理長の宮平翼氏は、花卉や野菜を主に生産しながら、コーヒー栽培を実施。現在は約350本の苗を植えているという。

 宮平農園が位置する沖縄県南部は、コーヒー栽培に適さないといわれるアルカリ性の土壌。様々な苗を試しながら、適した品種や栽培方法をしている。

 「来年は200本の苗木を植え、最低でも5年以内に1000本は植えたいと考えている。経験を活かして南部での栽培のノウハウを広げていきたい。収穫しても売り先がわからない、という声も聞くため、収穫物を集めてまとめて卸す橋渡しのような役割も今後は検討している」と意欲を示す。

 同じく協力農家の又吉コーヒー園は、コーヒー豆の収穫体験やアクティビティもできる観光農園を展開している。
 又吉コーヒー園の又吉拓之社長は、今年4月に開催した沖縄コーヒー初の品質評価会と沖縄県北部地域発のコーヒーイベント「やんばるコーヒーフェスティバル」を企画した。

 又吉社長は「県内の生産者が増えていることから、沖縄コーヒーの品評会をしたいと考えた。来年もイベントや品評会の開催を予定している。沖縄コーヒーの生産量だけでなく品質も上げていき、ゆくゆくはパナマのゲイシャのように注目されるオークションにまで発展したら嬉しい」との青写真を描く。

 現在、日本ではコーヒーが農作物として認められていないことを受け、又吉氏は行政との連携強化にも取り組んでいる。

「ネスカフェ原宿」で提供されるスペシャルメニュー
「ネスカフェ原宿」で提供されるスペシャルメニュー

 沖縄コーヒーの認知拡大に向け、「ネスカフェ原宿」(東京都渋谷区)では9月25日から10月19日まで「めんそーれ原宿!沖縄コーヒーフェス supported by NESCAFÉ」を開催。

 沖縄県産コーヒー豆を使用したコーヒーや沖縄県産黒糖を使用したムースを提供するほか、生産者の写真や沖縄県産コーヒー豆の展示、髙原氏のトークショーなどスペシャルイベントを行う。

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