越後製菓の“ふわっととろけるような”食感の米菓「ふんわり名人」 国産素材にこだわり製法に磨きをかけたところ宣伝せずにヒット

 くちどけの良い米菓をつくりたい――。

 こうした思いから、越後製菓の星野一郎会長を中心に開発に10年の歳月を要して2005年に誕生したのが「ふんわり名人」。

 発売20周年を迎えた現在、「ふんわり名人」は米菓の定番ブランドへと成長し海外にも雄飛している。
 ただし、その道のりは決して平たんではなく、試行錯誤の連続だったという。

 米菓に限った話ではないが、スーパー・量販店で米菓の新商品が定番ブランドの地位を獲得するのは極めて至難なこと。ロングセラーブランドが席巻する中、定番ブランドの“座席”を確保するには競合品との明確な差別化が求められる。 

 9月2日、発表会に臨んだ星野会長は「オリジナリティがあり特異的な製品というのは一体何なんだろうと自問自答し、“世の中にはないもの”“感動できるもの”“今までにないもの”をキーワードに『ふんわり名人』は生まれた」と振り返る。

星野一郎会長
星野一郎会長

 発売前の社内の評価は低かったが、餅製造も担う同社のノウハウを活かし、つきたてのお餅のような風味や“ふわっととけるような”食感を打ち出したことで、導入店では競合のロングセラーブランドと肩を並べるほどの売上を記録した。コンビニにも採用された。

 その後、芸能人やモデルなどがメディアに紹介し認知度も拡大したものの、売上は伸び悩み2014年まで不振が続く。

 低迷期では「『ふんわり名人』の枕言葉が“おいしい”ということになってしまい、これは怖いことだと思った。実力もないの“おいしい”、売れていないのに“売れている”と言われるようになってしまった」という。

 低迷期から脱したのは、原料へのこだわりによってだった。

 2014年、「ふんわり名人 きなこ餅」の原料米を、タイのもち米(もち米粉調整品)から国産のもち米100%に切り替えて、2016年にはきな粉を中国産から北海道産大豆に変更したところ、売上は倍々ゲームのように急拡大していく。

 「売上は、国産のもち米に変えたら3割上がり、きな粉も国産にしたところ、さらに3割上がり、3割増が2回続き、複利でほぼ倍増となった。TV広告やキャンペーンなど宣伝・販促せずに反応していだき、“お客様はすごい”と感じた」と語る。

 「きなこ餅」は現在、北海道大豆を一般的なきなこよりも深煎りにすることで、きなこ独特の香ばしさを引き出し、きなこに使用している砂糖の一部には和三盆を使用している。

 2020年には割れにくく改良したところ、さらに3割上昇。それまで「ふんわり名人」は「(新潟から)東京へ行くまでの間に半分くらい割れてしまっていた」という。

 2019年まで10年間、協力会社に製造を委託していたのも改めて内製化した。現在、片貝工場(新潟県小千谷市)で製造している。

 「私の深い自戒の念なのだが、忙しいからと言って他社に製造を依頼した時から技術や改良が止まることが分かった。自社工場の中で誰も『ふんわり名人 きなこ餅』を知らないような状況になってしまった」と述べる。

 自社製造で品質に磨きをかけ、2023年にはアメリカで販売を本格的に開始するなど世界で脚光を浴びる。

「ふんわり名人のお酒」(発泡酒
「ふんわり名人のお酒」(発泡酒

 「ふんわり名人」の前期(3月期)売上高は前々期比11%増を記録。今期も好調を維持しているという。

 秋は毎年好評のキャンペーンを実施。キャンペーンは9月1日から10月31日までの期間、「ふんわり名人」の「きなこ餅」「北海道チーズもち」「黒みつきなこ」「ごまだれ餅」「キャラメル味」の購入レシートで応募すると抽選で合計500人に賞品が贈られる内容。

 A賞には北海道産きな粉入りの「ふんわり名人のお酒」(発泡酒)5本を用意している。