〈持続可能性追求するアイルランドの食料生産〉ビーフ編② Foyle Food Group

顧客ニーズに対応徹底 農家との関係構築にも力

アイルランドとイギリスに5拠点を構え、グローバルに展開するアイルランドの大手食肉企業Foyle Food Group社。1400人の従業員を抱え、週当たり7000頭の牛を屠畜する。

輸出が売上の3割ほどを占める同社では、各市場が求める規格や顧客ニーズの把握に力を入れる。

「そのための現地調査は欠かせない。日本の焼肉やしゃぶしゃぶ店を視察したこともある。日本では、たとえば異物混入に対する基準が非常に厳格で、それに十分応えられる態勢の構築に努めている」。インターナショナル・セールスマネージャーのマリー・ディ・バルトロ氏が説明する。

生産農家との連携も重視。専門のチームが直接農家を訪問し、強固な協力関係を構築している。

「農家がいなければ、私たちのビジネスは成り立たない。当社が組織する生産者クラブの加盟農家には、牛の生産や販売に関する様々な情報を提供。また独自に展開するモデル農場では、先進的な生産手法を試して農家と情報を共有。優秀な種付け牛の精液を無償配布する取り組みも行っている」(同氏)。

この日訪れたのは、アイルランド北部に位置するドネガル工場。1300~1400頭/週の屠畜を行う。継続的な「カイゼン」に取り組む同社の方針に沿って、トヨタのかんばん方式を導入。常に最先端の技術への投資を行うとともに、顧客ニーズにもきめ細かく対応する。

全工場に導入している「センサーX」
全工場に導入している「センサーX」

個々の肉に占める脂質の割合を瞬時に測定する「センサーX」を欧州で初めて導入した。これにより、用途ごとに最適な脂質量の肉を提供できる。またハンバーガー向けの肉を仕分ける際に、以前はプラスチック製の容器やプラ製天板の作業台を使用していた。だがプラ片混入のリスクを日本企業から指摘され、現在ではステンレス製に変更。顧客ニーズへのフレキシブルな対応も強みだ。

日本向けには、日EU・EPAが発効した19年から本格輸出を開始。

同社は過去6年間にわたり、プレミアムなステーキ用部位、牛ひき肉用の部位、リブフィンガーやフランクプレートなどアジア市場で人気の部位、さらには牛タンをはじめとする多くの内臓肉を含む、様々な製品を日本市場に輸出。

「日本への輸出量や単価は、世界の牛肉生産量や牛の価格、関税、貿易交渉といった国際的な牛肉市場の動向に大きく影響を受けますが、私たちは常に、日本の大切なパートナーと強固な関係を築き続けていく」とディ・バルトロ氏は語る。

(つづく)