清酒大手メーカーの月桂冠は、日本からの輸出と米国月桂冠における現地生産の両輪で、酒類事業をグローバルに展開している。早くから進出したアメリカ、韓国をはじめ、世界各国で清酒「月桂冠(GEKKEIKAN)」の認知度は高い。
2024年秋、輸出専用で「純米酒」の新商品を発売。スタイリッシュなブルーのボトルに、ラベルには王道感ある「月桂冠」のロゴを大きくあしらった。米由来の甘さが感じられるすっきりとした酒質に仕上げており、今後は「純米吟醸」「純米大吟醸」などをシリーズ展開する方針。同社貿易部は「和食に限らず幅広い料理とのペアリングを提案していく」。
レギュラー酒+プレミアムライン
米国月桂冠(カリフォルニア州)は1989年設立。当時、海外で日本文化や和食への関心が高まり、日本料理店が増えつつあったという。現在はアメリカ国内のみならず、太平洋を越えて韓国にも相当量を出荷する。
現地製造の主力商品は純米酒の「Traditional」。日本で親しまれてきた味わいやラベルを踏襲し、和食店からリカーストアまで幅広く展開する。近年はプレミアムラインの特別純米酒「HAIKU」に注力。22年10月にリニューアルし、生詰によってフレッシュかつジューシーな酒質に仕上げた。
「Black&Gold」も人気。黒いボトルが印象的だが、中身の高品質なブレンド酒も好評。今年開催の「全国燗酒コンテスト2024」において、日本国外からの出品酒で唯一の最高金賞を受賞した。
日本からは主に高級酒やスパークリング、にごり酒などを輸出する。なかでもフラッグシップに位置付ける「鳳麟 純米大吟醸」の訴求を強化。「当社は海外でレギュラー酒を主力にしているが、本来は付加価値の高い日本酒にも強みを持つ。今後は『鳳麟』に特化したプロモーションも検討していく」(貿易部)。
韓国市場のパイオニアに
一方、海外40か国以上に展開する中で、韓国における存在感の大きさは特筆される。
きっかけは1990年代に日本文化が解禁されて以降、いち早く進出したことだ。現地企業との合弁会社(現在は解消)で輸入販売事業とレストラン事業を立ち上げ、当時まだ少なかった日本式居酒屋などを次々に出店、市場のパイオニアとなった。現在は飲食店やスーパーを中心に、米国月桂冠から輸出する「Traditional」、日本から出荷する韓国専用の「純米大吟醸」などが広く取り扱われている。
24年秋、輸出専用で「純米酒」の新商品を発売した。「月桂冠」のロゴを中心にあしらったラベルデザインと、多様な料理にあわせやすい酒質が特長。今後、「純米吟醸」「純米大吟醸」などをシリーズ展開する方針。同社は「海外で清酒の市場を拡大するには和食以外のシーンに浸透させることが必要。各国のディストリビューターとも連携し新しいルートを開拓していきたい」(貿易部)と展望する。
24年4~11月の清酒輸出実績は前年並み。国・地域別に見ると、中国向けは苦戦したものの、アメリカ、韓国、欧州などは伸びた。上位国は、数量ベースで1位台湾、2位韓国、3位アメリカ、金額ベースで1位アメリカ、2位韓国、3位台湾。