教室の前で広げられたのは3、4mあろうかという長い昆布。児童たちはその長さに目を丸くした。別の学校では乾麺になる前の手延べ麺を2人一組になって引っ張り、「こんなに伸びるよ」とはしゃいでいた。
▼卸とメーカーが乾物をテーマに小学校で開いた食育授業。その場で焼いた香ばしい海苔を初めて口にした子どもは「ごはんが欲しくなる」と一言。目と鼻と舌を通した体験は、いつまでも心に残るだろう。
▼子どもだけの話ではない。地域卸の社長は、リモートワークに慣れた若手社員をメーカーの工場へ連れていきたいと話していた。産地の高齢化で難しくなった農産物の収穫を卸の新入社員が手伝った例もある。商品のことを深く知れば売る気も強まる。
▼価格改定が続く中、単に値上げするのではなく、それに見合った価値をどうつけるかが大事。最近こうした声をよく聞く。その通りなのだが、同時に今ある価値をいかに伝えるべきか。多くの商品にまだ十分に伝えられていない価値があるのを実感する。安易な値下げに走る小売業にも同じ努力が求められている。