味の素AGFは今年、ギーセンジャパンが若手焙煎士の育成を目的に開催する競技会「1ST CRACK COFFEE CHALLENGE(ファーストクラックコーヒーチャレンジ)2024」にメインスポンサーとして協賛し、目下注力しているインスタントコーヒーなどで新たな可能性を探る。
9月13日、東京カルチャーカルチャー(東京都渋谷区)で決勝大会が開催され、THE ROASTERSの立野慶太さんが2024年チャンピオンに輝いた。
決勝大会は、制限時間内にプレゼンテーションとウェルカムドリンクで競うもの。抽出技術や創造性なども問われる。
AGFが主に協力したのは、競技会開催のサポートと焙煎技術を問う予選での審査。
一次審査では、AGFがガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)などを用いた香気と呈味成分の機器分析で100人の競技者を12人に厳選。
競技者は、事前に競技用生豆3㎏と競技用サンプル豆30gが与えられ、サンプルにできるだけ似せた焙煎を行い一次審査用に提出した。
GS/MSは、一般的に食品・飲料メーカーなどに普及しているものでガスの状態で測定する。1000種類ほどあるとされる香気成分から、どの成分に着目するかが各社のノウハウとなる。
決勝大会で取材に応じたAGFの浜名芳輝開発研究所商品開発部コーヒー開発グループグループ長代理は「1000種類の中から、これとこれに着目すれば、ある程度、そのコーヒーを説明できるのが我々の強み」と胸を張る。
審査にGC/MSを取り入れた理由については「人による審査はもちろん大事だが、より客観的な視点で評価する仕組みがあったほうがコーヒー業界全体の健全な発展につながるはず。現状では新たに頑張ろうとする人が評価されにくく、この大会ではルーキーの発掘をコンセプトとしている」と説明する。
競技会協賛の狙いの1つに、企業イメージやブランドイメージの向上がある。
「AGFは、インスタントコーヒーやレギュラーコーヒーなコモディティコーヒーをメインにビジネスをしており、特にスペシャルティコーヒーのコミュニティとの接点が皆無に等しく、何とかしていきたいという思いがあった」と語る。
決勝大会に勝ち残ったのは、カッピングによる二次審査を通過した6人。今回、新たな試みとして競技の合間にインスタントコーヒーレシピコンテストも開催。6人がアレンジドリンクを披露した。
レシピコンテストで使用したのは、AGFが業務用での販売を視野に開発したインスタントコーヒーの試作品。
レシピの評価を担当したAGFの木村駿太ソリューションビジネス部コーヒー開発グループグループ長代理は「可能性の1つとして、インスタンコーヒーで付加価値を出していきたい。バリスタや焙煎士といったプロの方にもインスタントコーヒーの魅力に触れていただきたい」と期待を寄せる。
競技会の開催は今年で3年目。ギーセンジャパンの福澤由佑代表は「コーヒーとテクノロジーという、ある意味、新しいことに挑戦している。コーヒー業界をよりよくしていくために模索している中で、データドリブンで焙煎を評価している。マイクロロースターの集まりに大企業のAGF様が賛同下さり、業界を前進させるムーブメントにつながっていく」との青写真を描く。