家庭用チルド麺 冷しメニュー未体験ゾーンへ 残暑を見据え期間延長

家庭用チルド麺の大手メーカーは、冷し中華など夏季向けメニューの販売期間を延長する。残暑の長期化を想定し、食品スーパーなどで気候に合った品揃えを目指す。

メーカーによっては冷し中華を10月中旬まで販売予定。従来は9月中下旬までに夏物を終売し秋冬商品への切り替えに動いていたが、昨23年夏の記録的な猛暑が端境期の売場を再考する契機となった。業界は未体験ゾーンに踏み込み、涼味商品のポテンシャルを引き出したい考えだ。

上位メーカーの幹部は「近年は10~11月になってもお客様相談室に『冷し中華』はどこに売っているかという問い合わせが少なくない」と明かす。「従来、夏物商材は旧盆(8月中旬)を過ぎるとほとんど売れなくなったが、ここ数年は9月もそれなりに売れる」という。

気象庁はこのほど、9月7日から1か月間の全国的な気温は平年より高めになる可能性が高いと予測した。7~8月の盛夏ほどではないにせよ、生活者の体感温度から冷しメニューのニーズも少なからずありそうだ。

シマダヤは、「『もみ打ち』生冷し中華」を10月中旬まで販売する。昨年までの〆日は9月末だった。リピーターの多いロングセラー商品だが、今春夏の売上は二ケタ増と好調。その勢いを持って初の10月販売を迎える。

また主力ブランド「流水麺」は、秋冬も重点ブランドに位置付けて拡販する。定番の「そば」「うどん」を通年展開しながら、「稲庭風細うどん」「そうめん」は販売期間を11月末まで延長する。今シーズンは8月下旬からテレビCMを放映。スタートダッシュを後押しした。

東洋水産は、「マルちゃんの冷し生ラーメン 3人前」の販売期間を約2週間延長し、9月末までとする。秋の新商品では「三刀流中華めん 2人前」シリーズを立ち上げ、「魚介香る和風しょうゆ味」と「柚子香る旨み鶏しお味」を発売した。まだまだ残暑が厳しい季節でも、その日の気分や好みにあわせてラーメン、つけ麺、まぜ麺のいずれかを選んで調理できる。

日清食品チルドは、小売業のプライベートブランドを中心に9月末まで冷し中華を供給する。これまでも「つけ麺の達人」や「まぜ麺の達人」など気温の変化に左右されにくいメニュー展開に注力しており、今秋もラインアップを強化する。

気候変動を背景に販売期間が延長される冷し中華だが、資材ロスのリスクは無視できない。特に主原料のスープ(つゆ・たれ)も外部から購入しているケースが多く、商機を逸すると転用がきかないからだ。取材では「当然ながら冷し中華は秋にかけて販売数量が減っていく。期間延長によって大きく売上を伸ばすという考えではなく、生活者の中にある一定のニーズに応えていければ。資材は慎重にコントロールしていく」との声が聞かれた。

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