そうめん商戦が最盛期を迎えた。猛暑に加え、コメ不足により小売店が主食として乾麺売場を強化したことから好調に推移している。7月中旬には市場で品薄感が漂い、出荷調整するメーカーも出てきた。昨年のような記録的な残暑が続けば、欠品するブランドも今後増えそうだ。
天候要因を受けやすいそうめん販売は、序盤の5月は多雨に悩まされたが、6月以降は平年に比べて梅雨入りが遅れ厳しい暑さが追い風となったことから、前年を上回るペースで推移している。
またコメが昨年の猛暑で不作となり流通量が減っているうえに、インバウンドなど外食の好調で引き合いは強く価格が高騰。小売店では欠品を防ぐためにコメの特売を抑制し、主食として麺類を露出する動きが広がっている。
こうした市場背景から7月中旬には早くもそうめんの品薄感が漂い、「一部商品で出荷調整している」と話すメーカーも出てきた。物価高の影響もあり売れ筋は価格志向の強い機械麺やPBだが、比較的高価格帯の手延そうめん群の販売も良好だ。
そうめんのガリバーブランド「揖保乃糸 手延素麺 上級品300g」は、値上げの反動で厳しかった昨年を上回る出庫量で推移。井上猛・兵庫県手延素麺協同組合理事長は「品薄とまではいかないが、需要相応の出庫が続いている」と話す。三輪そうめん「三輪の神糸」(マル勝高田商店)は、家庭用商品だけではなく、コンビニやスーパーの惣菜売場向け業務用調理麺が大幅に伸長している。
またこの暑さでテレビやネット、SNS関連でそうめん関連の話題も豊富で、その影響も出てきた。小豆島手延素麺協同組合「島の光 手延そうめん赤帯」は、7月13日放映の「サタデープラス」にて「おすすめのそうめん1位」として紹介されたことから問い合わせが増え、公式通販はパンク状態となった。翌週には流通各社に「在庫がなくなり次第終売」を通達。「同 黒帯」ともに今年度分は完売した。
市場の活況から、乾麺業界では秋以降の次年度商戦に向けた計画を練る。特に生産者不足による慢性的な供給不足が続く手延べ業界では、増産できる環境づくりが急務だ。
「揖保乃糸」では昨年に1割の値上げを実施したが、近い将来の価格改定も視野に入れ始めた。「(約400軒の)生産者が設備投資できる環境と、人材確保のため利益を確保したい」(井上猛理事長)考えで、今後の動向を注視して方向性を決める。
マル勝高田商店では、効率化により前年度に続き今年度も3割の増産を継続しているが、27年を目途に第2工場の稼働を進める。そうめん業界全体の供給不足に対応する。小豆島手延素麺協同組合は、3月から試験的に稼働させている組合直営工場の本格化に取り組む。
卸でも手延べ麺不足に対応する動きが広まっていて、日本アクセスでは代替として、手延べのような細さと特徴のある機械麺の発掘と販売強化に乗り出す方針だ。