コオロギ食とネット世論

以前に訪れたバンコクの街中で、多く見かけたのが虫料理の屋台だ。日本でもなじみ深い虫から、見たこともない虫までさまざま。いくつか試したなかにコオロギもあった。現地では「チンリッド」と呼ばれるそうだ。から揚げは香ばしいのだが、脚が口の中で刺さり痛いのが難点か。

▼食料危機解決策の一つとして注目されるコオロギ食には、風当たりも強い。先日もある製菓企業がクラウドファンディングでコオロギのスナックを開発したとの話題に、SNSでは否定的な反応が相次いだ。

▼本サイトで以前にコオロギ食を取り上げたコラムを掲載したところ、抗議のメールを何通かいただいた。「雑食で何を食べているか分からない」と原料が完全養殖であることを認識していない人、「補助金が目当てだろう」と昆虫食への補助金があると信じている人、「人類が昔からコオロギを食用にしなかった理由は…」と前提の誤った説を滔々と綴る人も。

▼「コオロギなんか食べたくない」と思う人が多いのは分かる。嫌な人にごり押しするような食材でもない。ただ、自分の思いに合致するネット情報だけを鵜呑みにして他者に食ってかかるのはいただけない。そんな確証バイアスに引きずられ、似た言説ばかりが幅を利かせるネット世論の横行が気がかりだ。

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