セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)は7月16日から主力商品である「手巻おにぎり」で従来よりも手頃な価格の「うれしい値」商品を発売している。
ラインアップは「しゃけ」と「ツナマヨネーズ」の2品。製法・開発へのこだわりはそのままに、具材の原材料を見直すことで2品とも値ごろ感を打ち出し税別128円で販売している。パッケージには「うれしい値」をデザイン。
物価高騰や実質賃金の低下で節約志向が急激に高まっていることに対応すべく、経済性訴求の商品を強化して客数増加を図るのが狙い。
SEJの第1四半期業績(2月期)は、生活防衛意識の高まりに対する対応が遅れたことで減益となった。
荒利額は増加したものの、広告宣伝費が増加し、売上拡大を狙った販促施策が想定の結果には至らなかった。
7月11日、セブン&アイホールディングスの決算説明会に臨んだSEJの永松文彦社長は「値引きの販促を強化し、そのときには効果があったが、販促が終了してからの歩留まりが高くなかった」と振り返る。
想定の結果に至らなかった理由については、変化対応の遅れを挙げる。
「この50年間、当社は価値ある商品ということで価格訴求ではなく価値訴求を追求してきた。約40年間デフレが続いたことも成長を後押した。インフレになったときにも、価値訴求は捨てるべきではないと思っていたため、低価格に対するスタートが半年くらい遅れたと思っている」と述べる。
既に、巻き返しを図るべく施策を転換。相対的に荒利益率の高いカウンター商品を強化して荒利益の水準をさらに引き上げていく一方で、「うれしい値」など値ごろ感のある商品を強化して客数増加を目指す。
「松竹梅の価格戦略の梅を強化するが、決して松や竹をないがしろにするわけではない。今後、人口減少・高齢化・地方の衰退の3つを考えると、やはり、地域の商圏の中で多くの方にご愛顧いただくために価格は無視できない。その上、荒利も確保しないといけないということで『お店で作るスムージー』(スムージー)や焼成パンなどで荒利益を確保する」との考えを明らかにする。
梅の戦略としては「値引きによる販促というよりも、恒常的に低価格の商品を投入する」。
一方、荒利拡大の取り組みとしては、中長期を見据えて、カウンター商品と宅配サービス「7NOW」(セブンナウ)を強化していく。
カウンター商品では、「スムージー」を上期中に全店導入し、焼成パンは24年度に約3000店に拡大する。加えて「次世代店舗の『SIPストア』からの学びを拡大していく。10年、20年先に向けて既存店をSIP型に切り替えていく」。
「7NOW」は7月現在、北海道・関東1都6県・広島県・九州7県の約1万2000店舗で展開。8月には関西2府4県・山口県・鳥取県・島根県・福島県の店舗が加わり約1万6000店へ拡大、24年度中に全国展開を予定する。
「来月から北海道100店舗で、できたてのトンカツを最短20分でお届けする。従来のコンビニにはない形でサービスと商品のレベルを上げていく」と意欲をのぞかせる。