ファミリーマートはリテールメディア戦略を加速させる。
同戦略は、ファミリーマート経済圏を構築すべく、店内のデジタルサイネージ・メディア「FamilyMartVision」とファミマのアプリ「ファミペイ」を組み合わせてコンビニのメディア化を図るもの。
今後、節約志向が一層高まることも想定し、戦略を加速させることで顧客との絆を強固なものにしていく。
7月16日、戦略発表会に臨んだ細見研介社長は、日銀によるマイナス金利解除に触れる。
「17年ぶりにゼロ金利が解除されインフレはこれからが本番であろうと考える。我々が久しく経験してこなかった金利のある世界に突入していくことになり、この世界で成長を確かなものにしていくにはお客様と強力にコンビになることが必要不可欠」との見方を示す。
今回、顧客との強固な絆づくりに向けて、アプリ・サイネージ・金融サービスの3分野に磨きをかけていく。
この3分野のうち日本の小売業界で初の試みとなるのが「ファミペイ」のオープンプラットフォーム化。「デジタルパートナーシッププログラム」と称し、専用ページでパートナー企業であるメーカーとの共創で独自の販促プログラムを展開してブランドと商品を訴求していく。
プログラムの参加状況をデータで可視化しリアルタイムで効果測定できるようにメーカーに開放する。
「メーカー様、卸様、小売業も多くの顧客情報を持たれているが、それをどうマネタイズしていくかに各社非常に悩まれている。連携を進めることで、直接的あるは間接的にマネタイズでき、これに伴い顧客層がより大きくなりデータ量が飛躍的に上がる」と期待を寄せる。
これにより顧客に対しては、より魅力的な商品やサービスを提供する。
「あまり考えたくないが節約志向が強まるとすれば、『ファミペイ』を通じたお得なお買い物が効果を上げていくのではないかと考えている」と語る。
顧客基盤強化の一環として、7月2日には初の会員プログラム「ファミマメンバーズプログラム」を開始。これは、レジで「ファミペイ」を提示すると月間の来店回数と購入金額に応じて翌月のランクが決定しランクに応じて特典が進呈されるもの。
出足は好調で「『ファミペイ』会員の獲得は以前の5倍を超える速さで拡大し、まさに“超速”」と胸を張る。
「FamilyMartVision」は1万店への設置が完了し、1週間の最大リーチ数は約6400万人に上る。今後、大都市圏を中心に2000店舗で追加設置し最大リーチ数を約7700万人へ引き上げる。
金融では「ファミペイ」のチャージ機能を強化。4つのチャージ手段の1つ銀行チャージの対象行数を10月以降、11行から100行以上へと拡大する。来春には「ファミペイ」のリアルカードを発行し、ガソリンスタンドや鉄道改札、海外の加盟店での利用も可能にする。
なお「FamilyMartVision」を運営するのは、伊藤忠商事と2021年9月に設立した子会社のゲート・ワン。小売業者間の購買データを活用したデジタル広告配信事業と広告代理店業を営む関連会社のデータ・ワンと連携して事業展開している。
金融を手掛けるのはファミマデジタルワン。
前期(2月期)、ゲート・ワン、データ・ワン、ファミマデジタルワンの関連事業会社3社は営業黒字を達成。細見社長は「カスタマーリンクプラットフォームの構想は軌道の乗ったと自信を深めている」と力を込める。