気象データを活用した商品の需要予測事業を展開している一般財団法人日本気象協会は、1か月以上先の天候を予測する精度を向上させ、気象業界初の最長2年先までの気象予測の提供およびコンサルタント業務を開始した。
資材調達や新製品開発、CMに活用
前年実績や勘に頼ってきた需要予測は、計画と実際のズレにより欠品や在庫過多による廃棄などを招き、食品ロスの原因にもなっていた。そこで気象予測データを活用することで在庫の最適化や効率化、食品ロスの削減に効果を発揮している動きが活発化している。
日本気象協会が展開する需要予測事業では、過去の出荷量やPOSデータ、客数データ、気象データなどをAIなどを経由して学習し、出荷量や売上、客数などを予測し、ロス軽減や利益率向上、CO2排出量削減につなげてきた。こうしたデータは食品・飲料メーカー(アイスクリーム、かき氷、ゼリー、飲料、ビール、麺類、調味料など)や食品スーパー、コンビニ、ドラッグストア、EC、アパレル、化粧品、日用品業界などに採用され効果を発揮してきた。
同協会では100社以上に商品需要予測の提供やコンサルタントを実施しており、その一例をみると、「inゼリー」を展開する森永製菓は、出荷量予測を利用し滞貨品在庫を20%削減し、「チョコモナカジャンボ」のパリパリ感を維持するため製造後5日以内を目標に出荷。
ネスレ日本は2週間気象予測で意思決定を前倒し、CO2を54%削減。Mizkanは中長期需要予測を利用し、冷やし中華の最終在庫を20%削減。相模屋食料は需要予測を豆腐に利用し、食品ロスを30%削減。
電通では需要予測を広告施策に利用。流通業界では、精肉の棚割り最適化で売上が10.5%増加し、ロスも1.1%減少した小売業者もあった。
これまでの商品需要予測は、今季の製造・販売数量計画や小売との商談での棚づくり、在庫最適化を目指し、最長6か月先まで提供してきた。しかし海外からの資材調達計画や来年度の月別経営・マーケティング計画、CM計画を考慮するなどの課題もあった。
その背景には、予測精度において技術的な限界があり、国の予報業務許可制度では最長6か月先までの予測しか出すことが認められなかったためだ。
しかし2019年から新技術が開発され、昨年11月から制度が変わり最長2年先までの予測が可能になった。
そこで日本気象協会では、筑波大学の助言・協力のもとで1か月以上先の天候を予測する精度を向上させ、最長2年先までの気象予測を可能にした(日本気象協会と筑波大は共同で特許出願)。
「2年先長期気象予測」の特徴は、
①従来の長期予報よりもリードタイムが長く予測精度が高い②月別・エリア別の定量的予測が可能③台風の接近数や梅雨明け時期などの事象も予測できる。従来手法と、今回の「2年先長期気象予測」の手法による予測の精度を比較したところ、予測誤差に20~40%の改善があった。しかも従来は気温だけの予測だったが、気温や降水量、日照時間、台風接近数、梅雨明け時期など5種類の予測が可能になった。
協会では「2年先長期気象予測」により次年度の年間計画が策定でき、資材発注や製造計画などシーズンインからオフまで長期間の予測が必要な計画づくりに活用でき、CMや新製品開発など、実施までに時間がかかるマーケティング施策にも活用してほしいとしている。