家庭用海苔が2年連続で値上げとなる。主産地の有明海で今期も不作に陥ったことが最大要因。大幅減産となった前漁期とほぼ同等の枚数しか生産できていない中、在庫が厳しくなった海苔商社が高値で応札。乾海苔共販(入札)の平均単価が前期よりも上昇し、21年度比約8割増で推移した。海苔メーカー各社とも早急な価格転嫁に向けて動いている。
昨年、12月上旬に行われた有明海の秋芽網初回入札では、前期よりも良い作柄に安堵する声がいくつも聞かれた。佐賀有明のブランド海苔「有明海一番」の認定品も2箱のみだが出品されるなど好スタートを切った。
しかし、12月下旬の第2回入札から質が著しく低下。海水温が高いうえに雨が少なく、プランクトンが居座って海中の栄養塩を食い尽くし海苔の成長を阻んだ。
年が明けると、佐賀有明が1月下旬の共販を中止。福岡有明は栄養塩があまりに少ないため冷凍網の出庫を遅らせ、1月下旬と2月上旬の2度中止することを決定。この時点で2年連続の不作が決定的となった。
気候変動を前期不作の要因に認めながらも「あくまで数十年に1度の事態」として、今期の生産回復を期待する業者が多かった。2年連続の大不作が業界に与えたショックは大きい。
全国漁連のり事業推進協議会によれば、3月15日時点の全国総共販枚数は40億枚(前年同期40億枚/前々年同期57億枚)で、平均単価21.79円(前期18.64円/前々期12.23円)。佐賀有明8億6千万枚(8億枚/15億5千万枚)、福岡有明5億7千万枚(5億4千万枚/12億8千万枚)、熊本有明7億5千万枚(7億1千万枚/8億5千万枚)で、前期とほぼ変わっていない。
今年の価格改定も有明の状況を待って、6月の実施が多数となった。昨年は規格変更を行わずに棒上げとした海苔メーカーが大半だったが、今年は値ごろ感を失わないように規格変更を行う企業も多い。各社の改定内容は以下の通り。
▽白子 6月から。家庭用海苔製品全般の希望小売価格を12~18%改定する。規格変更は行わない。
▽大森屋 6月から。家庭用海苔製品全般の希望小売価格を12~26%改定する。値ごろ感を維持するため、一部規格変更を実施する。
▽浜乙女 6月から。対象は海苔製品全品で、流通への卸価格を20%前後改定する商品が多い。規格変更はほぼなし、ごく一部で検討中。昨年、品質維持のため主力商品である「てりやき」を規格変更して価格を据え置いたが、今年は同等原料の仕入価格がさらに上昇したため価格改定の対象とした。
▽ニコニコのり 6月から。対象は家庭用海苔製品約100アイテム。流通への卸価格を10~22%改定する。3月21日現在、規格変更の予定はない。
▽永井海苔 5月からの実施。対象は海苔製品ほぼすべて。平均20%ほどとした。規格変更も一部行う。
そのほか、松谷海苔、浦島海苔(日本海水)も値上げの方向で検討を進めている。今期の共販は有明が4月中旬までで、全国の共販は5月上旬の終了を予定している。