その名は「晴れ風」 キリンから新定番ビール 「飲みごたえ×飲みやすさ」で時代に新風

これからの時代の新定番を狙うビールが登場した。キリンビールが4月に発売する「晴れ風」。同社としては17年ぶりに投入するスタンダードビールの新ブランドだ。26年にかけてのビール類酒税改正も見据え、「一番搾り」に次ぐ柱として育成する。

年初に発売予定が明らかにされ、注目を集めたキリンの新ビール。先日から商品名を隠したティザー広告で、期待感を高めてきた。3月26日の発表会で「晴れ風」のブランド名とともに、その詳細が初めて明かされた。

「価値観や行動基準がめまぐるしく変化する今、お客様の嗜好をとらえた新しいビールをお届けする」と表明した堀口英樹社長=写真㊧から3人目。

「私は入社後に『キリンラガービール』とともに社会人生活を始め、1990年には『一番搾り』が誕生。そして『晴れ風』の誕生で新しいキリンでの生活がスタートした。とてもわくわくしている。人と社会に、いい風を吹かせたい」。

ビールとしての飲みごたえ、そして飲みやすさの両立を目指して開発が進められた。

開発の苦労を語る東橋鴻介氏(晴れ風/キリンビール) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
開発の苦労を語る東橋鴻介氏(晴れ風/キリンビール)

「若い方だけでなく普段ビールを飲む方も(ビールに)重さ、飲みづらさを感じていることが分かった」(山形光晴副社長=同㊨から3人目)といい、中味開発には当時入社5年目の東橋(とうはし)鴻介氏を抜擢。

難題に挑んだ東橋氏は「困難だったのは、どう新しさを出すか。香りやのどごしを強調するブランドは多いが、今回あえて引き算のようなイメージで、特徴を低い強度でバランスさせ、飲みやすさを高めることに振り切った」と苦労を語る。

日本産希少ホップ「IBUKI」を使用。添加タイミングの調整でホップが穏やかに香るよう仕上げた。仕込みや発酵工程も工夫し、飲みづらさにつながる過度な酸味を抑制した。

開発を見守ったマスタブリュワーの田山智広氏も、最初の試飲では「ちょっと違う。新しさがないな」と感じたというが「最後は『これでいける』と勝利を確信。これからの時代にふさわしい、新コンセプト通りの中味ができた」と、堂々の太鼓判を押す。

花見など風物詩継承も支援へ

おなじみ「聖獣麒麟」とブルーのカラーリングで品質感と現代性を体現(晴れ風) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
おなじみ「聖獣麒麟」とブルーのカラーリングで品質感と現代性を体現(晴れ風)

新たに展開する「晴れ風ACTION」では、日本のビール飲用シーンを彩ってきた花見や花火といった風物詩を守る活動に、売上げの一部を寄付する。第一弾として、公募で選出した全国の自治体による桜の保全活動を支援。缶に表示されたQRコードからアクセスできる専用サイトからも寄付ができる。

「晴れた空の下で飲む、最高の気持ちよさをお届けしたい。世の中をビールで華やかにして、いい風を吹かせたい。そんな思いをブランド名に込めた」(山形副社長)。

狭義ビール市場は酒税率の引き下げも背景に、21年以降は伸長が続く。スタンダードビール分野では昨年に「サントリー生ビール」も新登場。「今」に照準を合わせた新ブランド同士の定番争いが活発化する気配だ。

「キリンビール 晴れ風」は4月2日全国発売。350㎖/500㎖缶、オープン価格。アルコール分5%。初年度の出荷目標430万㌜。数年後に「一番搾り」の半分以上の規模へと育成を目指す。

内村光良さん、天海祐希さん、今田美桜さん、目黒蓮さんを起用したCMでは、商品名を明かす新編も放映中だ。