セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は次世代店舗の創造に向けて新たな一歩を踏み出した。2月27日、新大型店舗「SIPストア」1号店として「セブン-イレブン松戸常盤平駅前店」をオープン。SIPストアで店舗数を拡大していく考えはなく、SIPストアから得られた知見やノウハウを平準店舗に共有していくのが狙い。
オープンに立ち会った永松文彦社長は「コロナや働き方改革、インフレなど時代の在り方が大きく変わっている中、次世代に向けた店舗の在り方や、商圏における消費ニーズを一層表現した店となる。イトーヨーカ堂(IY)をはじめグループのシナジーを発揮する店として展開し、これが成功に結びついた際にはここでのノウハウを拡大していく」と語る。
SIPストアの「SIP」とは、22年8月に立ち上げたSEJ・IY・パートナーシップ(通称SIP)を指し、SEJとIYの双方の強みを生かし、両社の持続的な成長を実現していくための連携強化を目的としている。
SIPストア最大の目的は最適化にある。
SEJの山口圭介執行役員企画本部ラボストア企画部長は「新たなニーズ、様々な事業会社のリソースを合わせたらどのくらいの変化があるか。加盟店を含め既存店に応用できることを探っていく」と説明する。
今後は、最低半年間の検証を行い、年度内に2店舗目を目指す。
「即時生かせることは生かす。ズレを修正しながらPDCAを回していく。店舗フォーマットや面積は松戸常盤平駅前店を水平展開するのではなく、郊外でより広い店舗にするのか、首都圏で住宅商圏を持つ店舗にするかなど、2店舗目の立地を非常に重要視していく」と述べる。
SIPストア1号店の店舗面積は通常の1.8倍、セブン&アイグループの強みを生かした生鮮や冷凍食品・チルド商品を取り揃える。アカチャンホンポ・LOFT(ロフト)・DAISO(ダイソー)商品を含めると約5千300アイテムにのぼる。
SIPストア専用商品は約2千SKUで、内訳はデイリー・冷凍食品3割強、菓子・アイス1.5割、加工食品2割、雑貨3割弱となっている。
内食・冷食は、価格競争ではなく利便性で勝負する。
「SEJの事業構造上、価格競争に入れない。SEJが持つ利便性の上に『明日の内食、明後日の冷食』といった品揃えを同時に展開すると、利便性が一層向上してトップラインが伸びるのではないかと仮説を立てている」。
コンビニ業態の課題である若年層や女性顧客獲得も検証する。
「ここ十数年、老若男女すべてのひとへ『近くて便利』で打ち出しているが、百貨店やGMS(総合スーパー)の利用客もすべて高齢化し、若年層支持率が低下している。SEJにおいては女性比率が男性比率を超えたことがなく、性別年代をフラットにしたい」。
このため、幅広い層に対応する品揃えを意識した。
生鮮は2点盛を中心とした刺身盛り合わせや、しゃぶしゃぶ用・焼肉用やステーキ肉など、用途に応じて品揃えし、使い切りサイズも充実させた。
通路を挟む形でチルドケースを配置し、中食ニーズに対応する大容量のカット野菜や、保存性が高い水煮野菜、IYの「顔が見える野菜。」「セブンプレミアム」「セブン・ザ・プラス」を豊富に取り揃える。
FF(ファストフード)も強化した。通常店舗より5mほど長い14.5mのセールスカウンターには、店で焼いたパン・ピザなどを充実させた。今後はFF開発にも一層取り組み、デリバリーサービス「7NOW」の主軸商材として育成していく。IYの展開にも寄与する。
IYの加藤聖子イトーヨーカドー執行役員食品事業部長は「スーパーストア事業が得意とする生鮮食品の品揃えや売り方、管理のノウハウをSIPに取り入れた。培った新たな知見は、特にイトーヨーカ堂の小型店舗で生かせるのではないか」と期待を寄せる。
冷食は「セブンプレミアム」「EASE UP」など約260アイテムを揃え、ダイソーの調理器具やお弁当グッズは計40SKUを揃えた。売場にワクワク感をもたらす試みとして、ナッツや菓子の量り売りコーナーを設置した。