全国パン粉工業協同組合連合会はこのほど業界紙記者を集め、パン粉業界の近況を報告した。
23年秋は麦価が6期ぶりに引き下げられたが、それまでは上昇が続き、小麦粉以外のコストも上昇する中で、それを吸収し切れていない企業が多い。粉価は1月に改定の予定だが、来年の春は再び麦価が上がるという見方が強い。
こうした現状を受け、小澤幸市理事長(富士パン粉工業社長)は「次の春は上がるだろうという予想が共通認識になっている。この2回をもって据え置いてもらえれば、何とか会社の体力を温存できる」と強調。同時にパン粉の認知度を高めるための活動に注力する考えを示し、次の通り語った。
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今回値下げされる前まで、据え置きを除き過去4回値上げが続いたが、各社とも満額は価格転嫁できなかった。以前は小麦の価格だけでやりくりできたが、昨今はエネルギーや人件費が高騰し、小麦だけで考えられなくなっている。今度の春は上がるだろうという予想が共通認識となっており、この秋と次の春の2回をもって据え置きにしてもらえれば会社は何とか体力を温存できる。
人件費が高騰し、人を集めるだけでも労力がかかり、注文があっても生産できないこともある。政府は賃上げを要求するが、その原資もない。パン粉メーカーがベースアップをして賞与を出し、機械の更新や株主への配当を実現するには小麦粉の4倍の価格で販売しなければ難しい。
パン粉の一般的な認知度は低く、メーカーが自社でパンを焼いて冷蔵し粉砕して、再び冷蔵して作っているということは、あまり知られていない。もっと広報活動を行い啓蒙しなければ市民権が得られず、苦しい事情も分かってもらえない。
今後は家庭用のレシピ提案やイベントへの参加、ホームページの充実などを通し、広く関心を持ってもらう努力をしていきたい。揚げ物は決してなくならない。お弁当にも必ず一つ入っている。どうしたら認知度を高められるか考え実行する。