家庭用チーズ市場 3度値上げで消費減退 コスト環境も厳しさ続く

2023年度上期(4~9月)の家庭用チーズ市場は、売上高が前年を上回って推移した一方で、昨年の春以降3度にわたる価格改定(容量変更含む)を実施した結果、物量ベースでは二ケタ減と大きく落ち込んだ。輸入原材料コストは昨年ピーク時からは軟化傾向にあるものの「相場が落ち着いてきたから値下げするかと聞かれるが、とてもそんな状況ではない」「当初想定していたよりも円安が相当進みストレートで響いてくる。輸入原料が下がっている実感はない」(大手乳業メーカー)などの声が聞かれ、エネルギーや包装資材など原料以外のコストも高止まりしていることから依然厳しい状況にある。

成長と踊り場を繰り返してきたチーズ市場は、2022年に入り状況が一変した。国際情勢の悪化で輸入原料チーズが急騰し、包装・資材、原油価格高騰による物流費やエネルギーコスト上昇などを背景に大手NBメーカーが1度目の値上げに踏み切った。

その後も急激なコスト上昇に値上げが追い付かず、円安の追い打ちもあった結果、22年4月と9~10月、23年4月と1年で3度の値上げを実施した。

足元では、昨年オセアニアがt当たり初の6千ドル超えとなった時に比べればピークアウトしているものの、国際的な乳価自体は上がっており、ウクライナ情勢や中国の経済状況、為替の円安などを含め不透明な環境が続く。

「これ以上乳価が下がるかでいえば、おそらく下がってこない」(雪印メグミルク)、「原料コスト自体は徐々に下がってきてはいるが、為替が円安に振れていることもあって依然高い水準」(森永乳業)、「輸入原料はこれまで上がっていたのが上がらなくなっただけで、高止まりの状態」(明治)。

こうした状況下3度の値上げを実施したが、相次ぐ食品値上げや物価上昇を背景に、チーズの購入数は減少。さらに内容量変更を含む価格改定の影響もあって、日々口にされているチーズの量は着実に減っている。

売上ベースでは二ケタ伸長したシュレッドチーズについても、容量ベースでは二ケタ以上落ち込んでいることから、今後は「新しい需要を創造して、物量を引き上げていく、チーズ自体の需要を拡大していくことをやっていかないといけない」(雪印メグミルク)というように、消費回復が業界共通の課題となっている。