「客離れが進まないか不安だ」。メーカーの通販担当者が悩んでいた。一般の市販商品は昨年以降、何度か値上げを繰り返した。価格改定だけでなく、規格変更も行った。販売量の落ちた商品もあったが、一応は受け入れられた。
▼顧客の動きが直接分かる通販。この会社での売上は1割にも満たないが、値段を上げた途端、購入されなくなるのか。量を減らしたら離れていくのか。不安ばかりが頭をよぎり、なかなか踏み切れない。
▼一方、通販の売上が4、5割を占める中小メーカー。状況はより深刻で、すでに価格も規格も見直した。コロナ特需の反動、中元ギフトの低迷などマイナス要因はほかにも多いが、断行しなければ会社の存続にかかわる。
▼通販業界では大手サイトやフリマが好調を維持しているという。還元策などでポイントがたまりやすい大手EC、割安に品物が手に入るフリマ。これらが支持される背景に、強まる消費者の節約志向があるのは明らかだ。ただ、商品力や売り方の工夫が新たな需要を呼ぶのは、店舗も通販も同じ。商売の手応えもまたダイレクトに伝わるはずである。