伊藤園の麦茶飲料ブランド「健康ミネラルむぎ茶」が前期(23年4月期)、過去3番目の販売数量と過去最高の販売金額を記録した。
前期販売数量は前年比4.8%増の3695万ケース。
1998年の発売開始から2023年4月までの累計販売本数が130億本を突破し、このほど、最も販売される麦茶飲料としてギネス世界記録に認定された。
ドリンク・リーフともに45%以上の金額シェアを握る「健康ミネラルむぎ茶」が牽引役となり、麦茶飲料の市場規模は12年の455億円から10年間で3.5倍に拡大。2022年は過去最高の1230億円に達した(伊藤園調べ)。
12日、国立競技場(東京都新宿区)で開催された「ギネス世界記録認定授与式・巨大気球出航式」で伊藤園の黒岡雅康麦茶・紅茶・中国茶・健康茶ブランドグループブランドマネジャーは、2011年の東日本大震災後の計画停電と2018年の酷暑を拡大の契機に挙げる。
「計画停電の中での暑さ対策として麦茶が注目されるようになり、それまで400億円に届かなかった市場が一気に伸び始めた。もう1つの契機が18年の酷暑で、ここで成長度合いがもう一段上がった」と振り返る。
「健康ミネラルむぎ茶」は前期、価格改定を実施したことで販売金額を押し上げたことに加えて「価格改定により回転(1店舗当たりの販売本数)がさほど落ちなかったことが上積みになり過去最高の販売金額を達成できたのだと思う。ミネラルと水分が補給できるという価値がしっかり伝わっているようでPBへの流出もあまりみられなかった」という。
今後も成長を見込み、最需要期の今夏については電気料金改定に着目する。
大手電力10社のうち北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の大手電力7社は、6月1日の使用分から電気料金を値上げした。
「電気料金改定で節電意識が非常に高まり、それに伴い“こまめな水分補給で暑さ対策をしなければいけない”といった意識が今後さらに高まると思う」との見方を示す。
麦茶飲料市場拡大の大きな背景には、温暖化が進んでいることが挙げられる。
「東京都の猛暑日の日数は2000年代までは年平均3.7日だったのが、2010年に入ると年平均が8日になり、さらに2020年代に入ると平均で10日以上に増え、日本の夏が年々暑くなっている」と説明する。
温暖化に伴う暑さ対策需要に加えて、飲用シーンが拡大していることや全世代で麦茶飲料の飲用が増加している点でも勝算を見込む。
「日本人の国民飲料になりたいという思いがあり、次のステージに向かっていきたい。市場規模が1000億円に達すると、お客様の嗜好も多様化してくるはずで、そのような変化にいち早く対応していくようなことを今後行っていきたい」と意欲をのぞかせる。
麦茶飲料を含む無糖茶飲料全体も多様化が進むとみている。
「より一層多様化が進んでいく。お客様がより自分に合ったお茶を選んでいく時代になっていくと思っている」と語る。
現在、需要喚起策としては、“暑さ対策グッズ”が絶対にもらえるキャンペーンを4月24日から8月25日にかけて実施している。これは“夏を快適に過ごしてもらいたい”というテーマのもと2018年から行われている恒例の企画で「年々多くのご好評をいただいている」という。
6月12日からは笑福亭鶴瓶さんを起用した新TVCM「気球」篇を放映開始して、暑さ対策や日本・世界で最も販売されている麦茶飲料であることを訴求強化していく。