高砂香料工業 今期売上 初の2千億円突破目指す 海外加速、国内は利益改善に注力

高砂香料工業の2023年3月期の連結決算の売上高は、前期比15%増の1千868億円、営業利益は32.5%減の59億円の増収減益だった。売上高は過去最高を達成したが、原料価格やエネルギー価格の上昇などによる経費増により営業利益は減少した。

地域別では、全地域で増収だったが、日本、米州において経費増や原料高騰などが響き減益。そのうち日本では、フレーバー部門は伸長カテゴリーや新規得意先の開拓に焦点を当てたことで、5.9%増の715億円を達成したものの、原料高騰などの影響により、営業利益は39.2%減の23億円にとどまった。

24年3月期の通期売上高の見通しは7.1%増の2千億円、営業利益は32.7%減の40億円。売上高は引き続き堅調に推移して初の2千億円の大台を突破し、過去最高売上を更新する見込みだが、原料高騰やエネルギー価格の上昇など各種経費の増加が見込まれ、利益は減少を予想している。地域別では、すべての地域で増収を見込み、日本も0.7%増の720億円を予測している。営業利益は地域によりばらつきがあり、日本は78.1%減の5億円を見込んでいる。

同社は中期経営計画(New Global Plan-1⦅NGP-1⦆、2022年3月期~24年3月期)で、創業100年を機に創業精神および企業理念を見直し、グローバルでの全従業員が共感し、2040年のありたい姿を描き「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンに「ビジョン2040」を策定。「海外の成長促進」「国内の利益改善」「サステナビリティの推進」を基本方針に掲げている。

このほど開催した決算発表の中でNGP-1について桝村聡社長は、「以前は海外利益が安定しない中、日本が安定した利益を生み出す構造だったが、近年は海外拠点が売上高、利益とも安定的に成長しており、グループ全体の業績を支えている。従って、今後も海外市場の成長を目指す。一方、国内は大きな市場拡大は見込めず、厳しい状況。だが海外成長が著しいとはいえ、全体の売上高の約4割は国内であり、安定収益を生み出す基盤としての役割を担うため、国内では利益改善を進めていく」との方針を示した。

中期経営計画における7つの重点課題の中で、「グローバル経営基盤の整備」では、基幹システムのシンガポール子会社への導入などを挙げる。「フレーバー・フレグランス製品生産性効率化」では、製造の効率化に向け、事業、研究、生産を中心に多角的に検討。「先端科学による競争力のある技術の創成」では、機能性食品などに含まれるマスキング香料や素材の開発を進めるとともに、香りが人の感情に与える影響、いわゆるエモーション分野の研究を強化し、各種データベースや人工知能の活用を挙げた。

今後の成長に向け、桝村社長は「世界の香料市場は中国、東南アジア、南アジア、中南米、アフリカなどに加えて、欧米でも成長していくと予想。グローバルネットワークを基盤に成長を図り、2040年には売上高3千億円、営業利益は力強い売上成長をベースに150億円(営業利益率5%)を目指す」と語った。

なお、国内のフレーバー部門における伸長カテゴリーとして飲料、セイボリーなどを挙げ、内外で伸長著しいプラントベースフードも、素材のマスキング技術などを生かしながら注力していく考えを示した。