日本ハムの食肉事業は国内食肉市場の2割強を供給し、国内の安定供給に貢献している。15日に東京都内で食肉セミナーを開催し会見した木藤哲大副社長食肉事業本部長は、リーディングカンパニーとして「持続可能な食肉事業を目指す」と強調し、「国産飼料の生産・利用拡大」、他者との「共創ネットワーク構築」などを推進する。これにより4月から、北海道産飼料を使用し飼料自給率向上を図る「北海道産鶏肉 北のこめこっこ」や、共創の循環型農業の飼料を活用した国産豚肉「麦小町」を新発売する。
食肉を取り巻く事業環境は「飼料高」「鳥インフルエンザの影響」「海外からの物流遅延」など様々な面で厳しい環境にある。木藤副社長が特に要因に挙げるのが飼料高で、主原料価格はコロナ前の1.5倍ほどに値上がっている。国も「国産飼料基盤に立脚した畜産の確立」として、飼料全体の国内自給率を、20年度の25%から、30年度に34%の目標を掲げている。
同社は22年から掲げた「共創」の考えから、飼料企業と飼料プロジェクトを立ち上げ、北海道産玄米を使用した「北海道産鶏肉 北のこめこっこ」を開発。北海道産玄米の活用により自給率向上や地域の稲作農業にも貢献。さらに鶏糞を道内の農家に還元し有効活用する。同品の味は官能検査も実施し、やわらかさやジューシーさが示された。まずは北海道内の量販店や本州の北海道フェアなどで販売していく。
国産豚肉の看板商品「麦小町」は、仕上げ期には15%以上の麦類を給餌し、うま味成分のグルタミン酸が1.6倍、ビタミンB1が1.5倍の人気商品。この麦小町の新しいラインアップ品として、規格外北海道産小麦を活用し、豚舎からの糞尿を肥料に加工するなどの循環型の「麦小町」を新たに発売する。
持続可能な食肉事業を目指す上での「共創」は、前述した飼料会社とのプロジェクトのほか、畜肉処理会社では、課題の脱骨などの重労働を機械メーカーと省人化に取り組み、グループ内の物流では、これまで加工品と食肉は別々だったが、物流の一元化にも取り組む。原料の外部調達も多くのサプライヤーとの共創を構築していく。