昨春の「スーパードライ」フルリニューアルでビールの成長加速へ手ごたえをつかんだアサヒビールでは、RTDでも新たな活動に着手。顧客の情緒的価値を中心に据え、従来とは一線を画す複数ブランドの発売を計画する。6日の事業方針発表会で明らかにした。エリアを絞ったテスト販売を経て、早期に全国展開する構え。25年までにRTDの売上を約1・5倍とすることを目指す3か年プロジェクトをスタートさせるという。
RTD市場は21年まで14年連続成長を記録。20年秋の酒税改正により増税となった新ジャンルなどからのユーザー流入が進んだほか、コロナ禍で広がった多様な家飲みニーズの受け皿としても地位を確立。ビール類に代わる食中酒としての存在感を高めた。
アサヒビールのRTD事業では20年の戦略転換を経て「アサヒ ザ・レモンクラフト」をはじめとした特徴ある商品にマーケティングを集中。ブランドが乱立する市場とは距離を置き、競合とは異なるポジション構築を図っている。今年はこれをさらに加速する構え。
「ビール類では勝ちパターンを知っていても、RTDはまったく違う市場。ビール類の売り方ではポジションの獲得は難しい。今ある領域からはみ出したブランドをエリアごとにテストして、狙いを絞って全国に拡売する。今あるレモンサワーではなく、その『次』を狙う」(専務取締役マーケティング本部長・松山一雄氏)として、市場の中心であるレモン系フレーバー以外の領域創出を示唆する。
機能や度数、フレーバーといった既存の軸から踏み出し、顧客の情緒に触れる新たな価値提案を行う考えのようだ。
RTD市場では、昨年にサッポロビールがグレープフルーツサワー専門ブランド「三ツ星グレフルサワー」を投入。またサントリーも、やはり昨年に発売した「翠ジンソーダ」への注力でジンのソーダ割りを根付かせる試みを展開。昨春にかけて各社の参入が相次いだハードセルツァー市場構築への動きもあり、レモン系フレーバー一辺倒が続いた市場にも変化の兆しが表れている。