使用済みペットボトル回収に新たな視点 リサイクル過程の“見える化”で回収量増え品質改善の可能性 ファミリーマートで実証実験

 使用済みペットボトル(PET)を専用回収箱(リサイクルボックス)に投入してからリサイクル素材に加工されるまでをスマートフォンのアプリで追跡できるサービスの実証実験が9月26日、ファミリーマート立石五丁目店(東京都葛飾区)で開始された。

 リサイクル過程を“見える化”することで生活者の行動変容を促し、回収量の増加と回収PETの品質向上の可能性を探るのが狙い。
 
 実験は11月25日まで行い、量と質で改善がみられれば実施店舗の拡大を検討していく。

 実験には、旭化成・ファミリーマート・伊藤忠商事・伊藤忠プラスチックスが協働。スマホアプリを使って誰でも実験に参加できるが、参加による特典は用意されていない。

 26日取材に応じた旭化成の井出陽一郎デジタル共創本部インフォマティクス推進センター先端情報技術部資源循環プロジェクトプロジェクト長は「今回は生活者の意識に訴えかけることでどう行動が変わっていくかに注目したい。経済的インセンティブなしの行動変容が最も重要なポイント」と語る。

 旭化成は、資源の循環を促進させるデジタルプラットフォームの構築を目指して「BLUE Plastics」プロジェクトを発足し、これまでもリサイクルボックスの実証実験を実施。

 今回、前回行った200人規模の実証実験で非常に強い傾向として現れた“もっとリサイクルの情報を知りたい”という声を反映させた。

 「回収後のプロセスに消費者は興味がないという前提に立っていたが、実はプロセスに凄く反応があった。自分が投函したものが本当にリサイクルされていることを知ることで実感が沸くことが示唆されたため、情報の非対称性(商品・サービスの売り手と買い手の間の情報格差)を解消することで消費者の行動が変わるという仮説に辿り着いた」という。

 ファミリーマートも「投函後にリサイクルが本当にされていることが可視化されることで、お客様にどのような行動変化が起きるかといったことを検証できればいい」(管理本部サステナビリティ推進部環境推進グループの原田公雄氏)と期待を寄せる。

スマホアプリでPETを投入した日時と本数、リサイクルによるCO2排出削減効果、PETの輸送状況や工場での加工状況などがリアルタイムに近い状態で確認できる。 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
スマホアプリでPETを投入した日時と本数、リサイクルによるCO2排出削減効果、PETの輸送状況や工場での加工状況などがリアルタイムに近い状態で確認できる。

 屋外に設置されているリサイクルボックスに使用済みPETを投入して参加する。その際、スマホアプリと連動させる。

 アプリでは、PETを投入した日時と本数、リサイクルによるCO2排出削減効果、PETの輸送状況や工場での加工状況などがリアルタイムに近い状態で確認できる。

 「一番大切なのは消費者の行動変容。消費者がきちんと使用済みPETを回収箱に入れるという構造的な隙間をいかに埋めるかが大きなポイントとなる。今回の実証実験では回収PETの量と質が上がり、消費者にはリサイクル品を積極的に買いたい気持ちになっていただきたい」(旭化成・井出氏)と述べる。

 Z世代などを中心とした環境意識の変化も追い風になりそうだ。
 「従来プラスチックは機能を提供してきたが、リサイクルPETも新品(バージンPET)も機能は変わらない。そこでリサイクルを選ぶ理由はストーリーだと思う。できるだけ正しいストーリーを提供していきたい」と意欲をのぞかせる。