11月17日に販売解禁されるボジョレー・ヌーヴォー。だが今春に勃発したウクライナ侵攻を背景に、受難の年となりそうだ。各社の商品政策にも苦境がうかがえる。
ボジョレー・ヌーヴォーの出荷量はピークの04年から約3分の1に減少したが、本国フランスを除くシェアでは日本が昨年も46%を占め、依然として最大の輸出市場だ(ボジョレーワイン委員会調べ)。
昨年は思わしくない作柄となったものの、コロナ禍で落ち込んだ料飲店需要が戻り始めたことで市場は回復が進んだ。だが続く今年は、最大の試練を迎えようとしている。
コロナの影響から世界的に容器・包材など資材の需要が増加する一方、生産の停滞で供給難が発生。さらに、大きな影を落としているのがウクライナ情勢だ。
「2月末にウクライナ侵攻があり、ロシア上空を飛行できなくなった。輸送のための飛行時間が延びて燃料使用量が増え、燃料スペース確保のため搭載量は減少。ルート制限による減便もあり、航空運賃の大幅な上昇が見込まれる」「本当に発売ができるのかというかなり難しい局面に立たされた」。
日本で圧倒的№1ブランドの「ジョルジュ・デュブッフ」を展開するサントリーのワインカンパニー・稲葉響子課長は説明する。同社では今年の商品数を絞り込むとともに、参考小売価格を昨年の1.3~2.2倍と大幅に引き上げた。
例年の2千円台から1千円も値上がりすることになり「3千円以上という値段が本当に受け入れられるのか、われわれも非常に不安だった」(稲葉氏)。しかし消費者調査ではこの価格でも一定の需要があることが確認できたといい、社内で議論を重ねて発売に踏み切った。
アイテムは4種6SKUに集約して製造効率を高め、包材の調達リスクを回避。新商品ではガラス瓶より軽量なPETボトルを採用した。ラインアップ縮小と店頭価格上昇から、販売数は減少を見込む。
またサッポロビールでは、タレントIKKOさんの「書」をモチーフにした商品など6種8SKUを発売する。
このうち2品については航空運賃の急激な上昇を極力回避するため船便で輸入することから、発売は来年1月となる見通しだ。
キリンビールのラインアップは、11月2日に発売する「シャトー・メルシャン」の新酒日本ワインを含め2種3SKUのみ。商品の安定供給を最優先に、最小限の品ぞろえに集約した。
このうち「アルベール・ビショー」のボジョレー・ヌーヴォー2品については航空運賃の高騰を考慮し、今年から新たに展開するハーフサイズを含めたPETボトルで発売する。フルボトル(750㎖)の参考価格は、前年の2千120円から4千310円と約2倍に引き上げられた。