家庭用チーズ業界では4月、大手NB主力品を中心に価格改定が実施されたが、「見立てていた以上に厳しい4月、5月となった」(メーカー)というように価格改定以降、想定を上回る売上減に見舞われる結果となったうえ、その後のさらなる原材料価格の高騰、為替の円安を受け価格改定しても収益が改善しない異常事態となっている。
家庭用チーズの価格改定は、輸入原料チーズ価格の急騰に加え、原材料や包装・資材、エネルギー、物流などのコストアップ、原油価格やコンテナ不足などによる輸送運賃の上昇、さらには為替の円安が追い打ちを掛けたことなどにより価格維持が困難になったもの。
今回の価格改定の影響は「実勢価格の引き上げ幅は10円程度」(メーカー)というが、加工食品カテゴリー全体で価格改定の動きが加速。消費者の生活防衛意識が高まるという環境もあり、特にスライス、シュレッド、粉といったコモディティ商品群を中心に、価格を据え置いている廉価メーカー商品やPBへのシフトが進み、NB商品の売上に影響が表れた形。
ただ、「考えもしなかった」(メーカー)というウクライナ情勢を受けた急激な円安の進行に加え、7~12月積みの輸入原料チーズ価格の高騰、エネルギーコストや物流費の上昇。さらには国産乳価の引き上げも想定されるなど、下期に向けてもコストプッシュ要因は目白押し。PBなどの価格改定も不可避と見られ、NB品についても年度内のさらなる価格改定が想定される。
「4月の価格改定ではコスト(の上昇分)をまったく吸収できていないところに為替の円安。輸入原料チーズ価格も大幅に上昇し、想定を超えている。今後、下げに入る材料は見当たらず高止まり、さらに上ブレするのではないかという状況。何もしない(価格を上げない)という選択肢はない」「コスト増は想定をはるかに超えている。今後、さらなるコスト増が見込まれることから、価格転嫁は避けられない状況。2022年度は非常に厳しい環境にある」(メーカー)というのが実情だ。
一方、「4~5月と需要がよくない中で対応を考えなければならない。できるだけ需要を冷やしたくない、というのが正直なところ。ここ数年のチーズ需要が堅調な時であればいいのだが、ここにきて局面が変わってきている」(メーカー)というように、度重なる価格改定により、右肩上がりで成長を続けてきたチーズ需要が冷え込むことへの警戒感も強い。
「チーズが持つ栄養価値や新しい商品・用途などさまざまな情報発信をすることで活性化を図っていきたい」「コロナ禍がいったん落ち着いたが、値上げによって家で食べよう、飲もうという傾向が強まるものとみている。その辺りをうまく取り込めれば家庭用の需要はまだまだ見込めるのではないか。本当に必要、買いたいとお客様に思っていただける商品。情報発信に加え、メーカーなので商品で伝えていくことが重要」(メーカー)というように、猛烈な逆風が吹き荒れるなか、いかに需要を喚起していくか。下期以降の大きな課題となってきた。