国産水が拡大 浮き彫りになった大容量の重要性  「サントリー天然水」「い・ろ・は・す」で共通する動き

 国産水が拡大している。

 全国清涼飲料連合会の「2021年清涼飲料水生産数量及び生産者販売金額」によるとミネラルウォーター類は21年、生産量が前年比8.1%増の415万4300kl、生産者販売金額が8.5%増の3319億2500万円を記録した。

 ナショナルブランド(NB)・プライベートブランド(PB)ともに拡大し、NBの「サントリー天然水」(サントリー食品インターナショナル)と「い・ろ・は・す」(コカ・コーラシステム)で昨年共通して浮き彫りになったのは大容量の重要性であった。

 「サントリー天然水」は、炭酸水など複数のカテゴリーを展開する中で「サントリー天然水」本体(ミネラルウォーター)が力強さを発揮して伸長。ブランドトータルで21年に過去最高となる前年比6%増の1億2010万ケースを記録した。

売場に並ぶ「サントリー天然水」本体2LPET - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
売場に並ぶ「サントリー天然水」本体2LPET

 サントリー食品インターナショナルの平岡雅文SBFジャパンブランド開発事業部課長は本体の成長要因の1つに、コロナ禍で家庭との接点を拡大できたという点で2Lの役割が大きいと指摘する。

 「“小容量を購入してから大容量を購入する”というのが一般的な飲料の流れだが、天然水はその逆で大容量がまず家庭との接点となり、次に外で小容量が購入される傾向にあるため、コロナが収束してお客様が今まで以上に外に出られたときに、小容量サイズの天然水を選んで下さる流れが出来てきているのではないか」との見方を示す。

 2Lは、11年の東日本大震災以降に高まる備蓄需要にも対応。

 「震災以降、備蓄マインドが高まっていることも大きい。あるエリアで災害が起きると、そのエリアで瞬間的に需要が上がり、その様子が見聞きされることで全国的に備蓄マインドが高まっていく」とみている。

 一方、「い・ろ・は・す」も昨年、全体で2ケタ増の販売数量(販売数量は非公開)を記録した。

 この中で「い・ろ・は・す 天然水」は、ミネラルウォーターの本質的な価値を伝える活動に注力して家庭内需要を掘り起こしたほか、人流回復に伴い外飲み需要を徐々に取り戻し回復傾向にあり、昨年の特筆すべき動きとしては、メインユーザーの若年層に留まらず50・60代からの支持も多く集めた。

「い・ろ・は・す 天然水」2LPET(右) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「い・ろ・は・す 天然水」2LPET(右)

 その理由について、日本コカ・コーラの朴英俊マーケティング本部ウォーター事業部部長は、家庭内需要の増加を受けて「い・ろ・は・す 天然水」でこれまで手薄だった大容量の2Lを押し出した結果も要因だと指摘する。

 「特にスーパー・量販店チャネルでは、白を基調としたカートン(ケース)を採用し陳列を強化するなどして2Lを通じて天然水の品質訴求を行ったところ、品質に敏感な50・60代のお客様の獲得につながった」と振り返る。

 2Lの押し出しが555mlなど小容量に波及する動きもみられ、これは天然水カテゴリーならではの動きと分析する。

 「一般的には小型で馴染んでいただいてから大型にいくが、天然水カテゴリーは炊飯や料理に使われるといった生活水の需要もあり、大型でよさを実感していただいてからパーソナルユースで飲み歩く小型も大型と同じブランドを選ぼうという逆の動きもあるとみている。『い・ろ・は・す 天然水』では50・60代の小型の飲用率も伸長したこともあり、大型から入ってくれた可能性は高い」との見方を示す。

 50・60代のトライアル獲得にはプロモーションも奏功した。

 昨年は、2LPETのケースに記載している二次元コードから応募すると、6つの採水地の自然が育んだ6種類各1kg(計6kg)のお米が当たるキャンペーンを実施したところ「該当年齢層のご購入のきっかけの1つになった。見た目は派手ではないかもしれないが、暮らしに役立つもの好評をいただいた」という。

 このような手応えを受け、今年の方針は「エコやサスティナブルといった『い・ろ・は・す』がもともと持っていた価値にプラスして、天然水の品質訴求を続けていく。特に店頭訴求がこのカテゴリーでは非常に大事だと改め実感したため、注力していく」。

 店頭販促は5月下旬から予定(取材時)。「買えば買うほどメリットを感じていただけるマイレージ型の消費者キャンペーンを考えている」という。

 これに対し「サントリー天然水」では、女優の石橋静河さんを継続起用したコミュニケーションを実施していくほか、5月14日に一般公開した「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」を起点に体験を通じたブランド価値浸透も強化していく。

 「北アルプス信濃の森工場で一番感じていただきたいのは、工場があるその土地の空気。製造ラインの見学もできるが、製造以外のスペースを広くとり、天然水が育まれる環境や山々の美しさ、空気のおいしさを体験していただきたい」(サントリー平岡課長)と語る。