新型コロナウイルスの影響で乾麺の販売好調が続く。巣ごもり消費や自宅の昼食需要が増加し、平年なら販売量が少ない2月末から急激に伸び、現在は落ち着きつつあるものの需要はいぜん活発にある。
その一方で懸念されるのが、これから迎える最需要期の動向。市場ではすでに手延べ麺の品薄感が高まっており、自粛解除のタイミング次第では品切れになりかねない。さらに大きな市場である中元ギフト商戦に影響が出そうだ。
総務省家計調査によると5~8月の4か月間で乾麺の63%が消費され、5月はいわば最需要期入り口に当たるが、初春から低価格のPBや機械製乾麺を中心に需要が伸び、大規模施設を有する乾麺メーカーで増産体制が続く。
好調な機械製に比べて、手延べそうめんやひやむぎは販売市場によって明暗が分かれている。家庭用商品は、秋冬の厳寒期に生産された分が3~4月から店頭に並び始めたが、コロナ特需で機械製同様に好調。
特に価格訴求が強い島原産の引き合いが強まっている。事実、島原産は家庭用に量が流れた影響で業務用への原麺供給がタイト。原麺を仕入れ加工販売する業者では「4月末段階で販売は平年の7掛けに達するが、追加仕入れできない状態。6~7月に切らさないよう慎重にならざるを得ない」という。
また、乾麺市場で販売シェア1位の兵庫県手延素麺協同組合「揖保乃糸上級品300g」も、高価格帯ながら好調だ。組合からの商品出庫量は過去にないペースで動いている。「19年9月~3月累計で前年対比6万箱増(9㎏換算)、4月以降GWまでは好調だった前年同時期並みで推移している」(井上猛理事長)。
しかし今後、段階的に緊急事態宣言が解除されれば様相も変わる。早々に外出や外食が可能になれば、これまで買い込んだ食料品が家庭内在庫に回り、消費最盛期に停滞する恐れがある。自粛体制が続けば家庭消費がさらに進み、市場変化に合わせて増産できない手延べそうめんを中心に、品切れになりかねない。
家庭用以上に懸念されるのが、ギフト向け商品の動向だ。中元市場は近年縮小しながらも、乾麺業者にとって重要な位置付けに変わりはない。
見通しの立たない環境に、西友が早々に中元の開設見送りを発表(オンラインのみ販売)。これに追随する動きが他社で広がり始めた。三越伊勢丹や髙島屋など老舗百貨店ではセンター開設を検討するが、サンプル陳列縮小と試食を中止、その分受注スペースを広げる方向で進めている。
直販の機会が減り、その分の売上げがネットに流れることは考えにくい。また急激な経済悪化もあり、今年の中元市場の売上げ予想は全体で3~4割減との厳しい見方もある。乾麺ギフトの仕入業者にとっては、売上げが大幅に減少しても販売に係る経費が返金される保証はなく、不安視する声が全国各地で高まっている。