菓子市場は金額ベースで拡大の一途をたどる。全日本菓子協会の「令和6年 菓子生産数量・生産金額及び小売金額(推定)」によると2024年菓子市場は生産数量が前年比0.6%減の198万4654トン、生産金額が4.1%増の2兆7886億円、小売金額が5.3%増の3兆8785億円となった。
実質賃金がマイナスの中、メーカー各社によるコストプッシュ型の価格改定が相次いだことで22年・23年と前年を超えた生産数量は24年に若干の落ち込みをみせたものの、価格改定効果を含めた金額成長を勘案すると菓子市場は全体としてプラス基調で推移していると言える。
今年も、猛暑や備蓄米の放出が部分的に打撃を与えたものの、引き続きプラス基調で推移している。1―8月累計の市場は、販売金額4%増、販売数量1.9%減と推定される。
こうした底堅い需要の要因について、各社の需要喚起策に加えて、山星屋と髙山が共通して挙げるのは菓子の食事代替ニーズ。
山星屋の猪忠孝社長は、インバウンド需要とともに食事代替ニーズを要因に挙げ、食事代替ニーズについては「コメの価格高騰により今後はむしろ食事代替としてお菓子の需要が高まる可能性もある」との見方を示す。
一方で、コメの価格低下を目的に大量放出された備蓄米についてはマイナスに働いたとみている。「備蓄米が5キロ2000円前後で売られ、その分、お菓子への支出が減ってしまった印象を受ける」と語る。
「重要なのは、値上げはお菓子に限ったことではないこと」と指摘するのは、髙山の髙山時光社長。
「全般的に物価が上昇する中で、お菓子の食事代替ニーズが顕在化している。消費者の食卓を追跡調査したわけではないが、パネルデータなどをみていると、例えば半生菓子や焼菓子などの伸長から食事代替の需要に応えたことも推察される」と続ける。
コンフェックスの昆靖社長兼グループCEOは、食事代替ニーズについては「見えにくい」としつつも、底堅い需要の要因については「一つ言えることは、お菓子の単価が食品と比べて安価である点」と指摘する。
三菱食品の24年度の菓子類は売上高3.9%増、取扱規模は3000億円を突破した。三菱食品の細田博英取締役常務執行役員商品統括は「嗜好品である菓子は値上げの影響を受けやすいが、デジタル施策により、伸びているカテゴリー・商品を中心に提案を強化し、物量を維持できたことが売上・利益の拡大につながった」と振り返る。
外林、大善、エスピービーの外林グループは前期(5月期)、売上高が前々期比7%増の1064億円となり1000億円の大台を突破した。
前期の増収要因について、外林の外林大忠社長CEOは「お取引させていただいている小売店さまの業績が好調であることに尽きる。もちろん、インフレといったメーカーさまの値上げ効果も寄与したが、食品スーパーさまやドラッグストアさまの好業績によるところが大きかった。値上げ効果が業績に与えた影響は3%程度とみている」と述べる。
ナシオの前期(5月期)売上高は、前々期比10%増の705億2900万円に達し過去最高を記録した。
増収要因について、ナシオの平元彦社長は「市場による効果(NB商品の値上げ効果)と、当社の施策などにより仕入れ先(メーカー)さまの拡大と販売先(小売企業)さまの拡大が図れたことが寄与した」と説明する。
ナシオは近年、“地域と地域をつなぐ”を使命に掲げ地域商品の発掘を強化。同社でしか取扱いできないようなキラーアイテムや新規の仕入れルートを開拓して売上を拡大している。
取引メーカー数は現在、約2500社。「1年間の肌感でいうと、200~300社増えている」という。
関口の前期(3月期)売上高は前々期比7.5%増の265億円となった。増収要因について、関口の関口快太郎社長は、メーカーのNB商品の価格改定効果に加えて、全般的にシェアを拡大できたことを挙げる。
需要面については「全体的に価格改定効果で販売金額は前年プラスで推移し販売数量は前年を少し割り込んで推移しているとみている。特にチョコレートはその傾向が強い。一方、グミや駄菓子は調子がよく、数量でも伸ばしている」とみている。
アイネットホールディングスの前期(8月期)売上高は前々期比2%増の146億円となり5期連続の増収を達成した。
アイネットホールディングスの小黒敏行社長は「利益は、PB商品とオリジナル商品の原材料高騰、さらには人件費・物流費の高騰により厳しかったが、PB商品の売上拡大により売上対経常利益率は10期連続で1%を維持し、直近の3期でみれば2%を確保した」と述べる。
