ビール好きのためのノンアル 大手が相次ぎ投入 「まるで本物」競う

ノンアル市場の約8割を占めるビールテイスト飲料。飲めないときの「ビールの代わり」から、積極的に楽しむための選択肢へと脱皮すべく開発競争が過熱する。キーワードは「まるで本物のビール」だ。

健康意識の高まりや生活者の価値観変化から、アルコール分0.00%のビールテイスト飲料の販売規模は昨年までに17年比16%増(キリンビール調べ)。

このジャンルに期待される価値は「リフレッシュ感」「健康志向」などに大別されるなか、今後の伸びしろが期待されるのが「本物のビールらしさ」である。

技術革新の進展も背景に、ビール好きのユーザーを狙った本格的な味わいの商品が相次ぎ投入されている。

サントリーが9月24日から発売するのは「THE BEZERS(ザ・ベゼルズ)」(350㎖缶)。ビールの貯酒工程に着想を得た「熟成」で旨みを引き出すとともに、スピリッツ原酒を脱アルコール処理したエキスをブレンド。ノンアルながらビールで感じられるような飲みごたえを実現したという。

「あらためてお客様のニーズを確認すると、もっとおいしくしてほしい、お酒のような余韻や複雑身を感じられるものがほしい、といった声があった。ビールで感じられる飲みごたえを、しっかり感じていただける中味開発にチャレンジした」(同社ノンアル部長 福本匡志氏)。

発売を前に、俳優の浅野忠信さんが出演するCMも放映開始。健康志向層に支持される同社のロングセラー「オールフリー」とは異なる、お酒らしさや飲みごたえにフォーカスしたブランドとして育成を図る。年内の販売目標は45万㌜(8.4ℓ換算)。

ライト層・ノンユーザー層の獲得がカギ?

またキリンビールは「キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ」(350㎖缶)を30日から発売する。

「ビールを飲んだときのような気分になれる」商品を目指し、同社ノンアル史上最大の投資額と4年の歳月をかけて開発。キリンの原点であるラガータイプの味わいを再現するため、ラガービールの製法で醸造したビールを脱アル処理。その際にアルコールとともに失われてしまう成分を補うなどの工夫を重ね、これまでで最もビールに近いおいしさを実現したという。

キリン「ラガーゼロ」発表会で(19日)
キリン「ラガーゼロ」発表会で(19日)

「ビール類は購入するけど、ノンアルビールは月1回未満という方が5100万人。これを捉えることがカギ」と語るのは、同社マーケティング部カテゴリーマネージャーの木村正一氏(下写真㊧)。おいしさへの期待感を満たすことで、チャンスが広がるとみる。

「(ビールテイストに求められる)ニーズとして一番大きくて伸びているのは、本格ビールらしい味わい。ノンアルビールのフラッグシップとして育成していきたい」。

爽やかなリフレッシュ感が支持される「キリン グリーンズフリー」との両軸で成長させたい考えだ。年内約50万㌜(大びん換算)の販売を目指す。

アサヒビールが昨年1月に発売した「アサヒゼロ」も、脱アル製法で実現した本格的なビールらしい味わいが好評。試飲イベントでは、本物のビールと間違える人も続出した。今春には飲食店向けの小瓶も加わり、8月までの販売数量は当初年間目標の8割に到達。目標を2割増の240万㌜に引き上げている。