ここ数年、6月梅の時期の梅酒漬けは記者の年中行事だ。青梅についた茎を楊枝で除き、流水で洗ってから丁寧に水気を取る。後はホワイトリカーに氷砂糖と青梅を交互に漬けるだけ。徐々に梅エキスが抽出され、半年後には琥珀色の梅酒へと姿を変える。
▼12月某日“初物”の梅酒をいただいた。オン・ザ・ロックスがお薦めで、深みのあるコクが疲れを癒す。梅酒は梅の保存方法の一つとして江戸時代から存在したと言われるが、砂糖が高価だった当時は一部上流階級の嗜好品。あらためて、先人の知恵のありがたみを感じる。
▼その青梅。今年は暖冬や雹の影響で最大産地・和歌山で大不作。青梅価格の高騰で節約志向の矛先が梅酒漬けに向けられ、梅酒作りに欠かせない氷砂糖の出荷はかつてない落ち込みとなった。
▼異常気象による農産物の不作や物流費上昇など物価高の要因には事欠かない現在。厳しい家計の中で嗜好品への支出が削られるのは致し方ないとはいえ、日々の生活が彩を失ってもつまらない。今宵も梅酒をやりながら、来年の梅に思いを巡らせようか。