サクラ食品工業(大阪府吹田市)が昨年4月に発売した紙容器入りミネラルウォーター「清流咲良之舞(せいりゅうさくらのまい)」が好調だ。飲料の主流であるペットボトルとは異なる紙の容器が評価され、新たな販路を開拓している。6月にはパッケージの異なる第2弾「清流咲良納涼図(せいりゅうさくらのうりょうず)」を投入した。
昨年発売した「清流咲良之舞」は酒どころとして知られる京都・伏見の地下水を使い、パッケージには画家・絵師の石川真澄氏が描いた浮世絵を施した。
発売直後の5月に開かれたG7広島サミットの会議に採用されたのをはじめ、関連する国際会議でも使われた。ほかにも来店客の9割以上が外国人という銀座のカフェ、羽田空港のコンビニなどインバウンド需要の強い店を中心に広がった。特に注力しているのがホテルだ。外国人の利用が多いということも一因だが、別の理由からも同製品の特徴が受け入れられている。
22年4月にプラスチック資源循環促進法が施行され、ホテルはプラスチック製備品の削減へと舵を切った。ペットボトル飲料についても同様で、代替品として紙製の「清流咲良之舞」が受け入れられた。
新たな効果も生まれている。美しい浮世絵の描かれたパッケージを捨てずに持ち帰る宿泊客が増え、部屋では飲みかけのペットボトルなどのゴミが減った。月に200件のペースでホテルに営業を行った市場開発部の辻啓人氏は「宿泊者へのサービス向上と、SDGsの観点から評価いただいている」と話す。
関西地区では、大阪・関西万博の開催まで1年を切り、それに関連した国際的な会議が増えている。その場に「清流咲良之舞」が採用される機会も多い。「京都の水を使い、滋賀の工場で製造し、大阪の当社から国内外へ広がる。そういう流れができつつある」(市場開発部・柏原裕司課長)と手応えを得ている。
今後、春夏秋冬で異なるパッケージの製品を投入し、「日本の四季を楽しんでもらえるギフト商品としても提案したい」(同)考えだ。
SDGsの浸透を背景に、浮世絵シリーズを含む紙容器製品全般が支持を集めている。コロナ禍で多くの企業は来客へお茶を出すことをやめ、代わりにペットボトル飲料を提供するようになった。最近では大手や外資系を中心に、それを紙容器へ切り替え企業イメージの向上を図る企業が増えている。
紙容器ミネラルウォーターの出荷数はこの6年で約5.5倍伸びているという包材メーカーのデータもあり市場はさらに広がると予測される。